第二章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
「十五世紀からあるお店ですか」
「いや、言えばと言っただけで」
男は笑って返した。
「この店は十六世紀からです」
「そうですか」
「一五四〇年に」
西暦で言った。
「はじまったので」
「十五世紀からでないですか」
「隣の店がです」
如何にもという感じの店の中で話した。
「そうです」
「十五世紀からですか」
「やっていまして」
「お隣に行けばですか」
「十五世紀からになりますよ」
「そうなんですね」
「ちなみに私は去年です
男はさらに話した。
「お店を継いでいます」
「去年ですか」
「はい、そして」
そのうえでというのだ。
「今こうしてです」
「お酒を出してくれたんですね」
「そうです、しかし」
ここで男は夫婦に尋ねた。
「お二人はアジア系で」
「日本です」
「あの国から来ました」
「また英語が流暢ですね」
このことを言うのだった。
「これまた」
「はい、実はです」
仁が答えた。
「二人共大学は英文学科で」
「英語をですか」
「勉強していまして」
「今も英語に携わる仕事をしていまして」
社内でというのだ。
「妻は英語の先生で」
「だからですか」
「二人共こうしてです」
「英語をお話出来ますか」
「そうです、書くこともです」
男に微笑んで話した。
「得意なので」
「それで旅行もですね」
「出来ています」
今の様にというのだ。
「そうなんです」
「それは何よりですね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「こちらも独特の訛りがありますね」
英語のそれがというのだ。
「やはり」
「そのことがわかりました」
雅恵も言ってきた。
「プリマスの方言ですか」
「そうです、こっちにはこっちの方言があります」
男もそうだと答えた。
「やはり」
「左様ですね」
「ではその方言もですね」
「聞きながら」
そうしてというのだ。
「ジンを楽しませてもらいます」
「そうですか」
「ではもう一杯」
夫があらためて言った。
「いただけるでしょうか」
「どうぞ、十六世紀からの味で宜しいですね」
「喜んで」
笑顔で応えた、そうして夫婦でイギリスの港町の古い酒場で飲んでいった。十六世紀からの店も実によく。
「いいお店だったな」
「そうね」
「じゃあ明日の夜も行くか」
「そうしましょう」
ホテルで二人で話した、そして実際に次の日の夜もその店に行った。そうしてジンそれに歴史を楽しんだのだった。
そんな二人を見てだ、ドレイクは天国で生前部下だった者達に言った。
「ああして楽しんでくれるだけでいいな」
「ええ、十五世紀でも十六世紀でも」
「プリマスを楽しんでくれて」
「ジンを飲んでくれるならいいですね」
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ