第一章
[2]次話
幻想都市
高校で美術部に所属している金沢大輝は今悩んでいた、茶色がかった癖のあるショートヘアで眼鏡をかけている。大人しい顔立ちで背は一七〇位で痩せている。白い半袖のブラウスとダークグレーのズボンという組み合わせの制服である。
キャンバスを前に腕を組んで座っている、その彼に一年生で二年生の彼から見ると後輩になる冲田菫が笑いながら言って来た。
「先輩どうしたんですか?」
「アイディアが浮かばないんだよ」
こう菫に返した、見れば美術部員らしからぬ褐色に焼けた肌で黒髪をロングにしていて切れ長の大きな目を持つ悪戯っぽい笑みを浮かべた少女だ。背は一五八でスタイルがいい。ダークグレーのミニスカートからも奇麗な脚が見える。
「これが」
「今回の部活のテーマは街ですね」
「ファンタジックなね」
「超現実主義ですね」
菫は大輝に言った。
「そうした絵を描く」
「そうだけれど」
大輝は難しい顔のまま言った。
「僕そうした絵描いたことないし」
「そうなんですか」
「中学から美術部だけれど」
それでもというのだ。
「人物画や風景画は描いて」
「街もですね」
「描いたよ、それで超現実主義の絵も」
それもというのだ。
「描いたしモンスターだってね」
「この前ドラゴン描きましたよね」
「前の部活のテーマでね」
「そうでしたね」
「そういうのは描けても」
それでもというのだ。
「ファンタジーな」
「そうした街はですか」
「どんなのか」
「よく異世界転生のアニメありますよ」
菫は大輝の真っ白なキャンバスを見つつ言った。
「そういうの駄目ですか?」
「いや、あれ中世の欧州の街とかじゃない」
大輝はすぐに答えた。
「だからね」
「駄目ですか」
「それじゃあファンタジーな世界でも」
「街はですか」
「そうじゃないから」
ファンタジーではないというのだ。
「ちょっとね」
「描けないですか」
「それが日本や中国もで」
そうであってというのだ。
「アメリカでもだよ」
「アメリカならサイバーになります?」
「近未来なね」
「それはファンタジーじゃなくてSFですね」
「そうだよね」
菫に考える顔のまま話した。
「それだと」
「そうですね」
菫も否定しなかった。
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