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ピレネーの城
第一章

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                ピレネーの城
 エカチェリーナ=イヴァノヴァ=トルストヤは授業でルネ=マグリットの絵を見てそのうえで言った。
「是非住みたいですわ」
「このお城にやね」
 同学年であり交流のある紫綾乃が応えた、二人は同じ八条学園中等部に通っているので知り合いであるのだ。
「空に浮かぶお城に」
「ええ、ですが」
 エカチェリーナはがっかりした顔になってすぐにこう言った。
「これはあくまで、ですわ」
「ないものやね」
「この世界には」
「シュール=リアリズムの世界やね」
「そうですわ、ですから」
「こんな巨大な岩が浮かんでて」
 綾乃も教科書にあるピレネーの城の絵を観つつ言った。
「その上にお城があるなんて」
「絶対にですわ」
「有り得へんわ」
「そうですわ。ですが」
 エカチェリーナはそれでもと話いた。
「夢としましては」
「ええね」
「はい、夢に見ますわ」
「このお城に住むことを」
「そうですわ」
 こう言うのだった。
「やはり」
「夢の中やと適うね」
「そうですわ」
 起きた世界の学校でこうした話をした、だが。
 やがてエカチェリーナは眠ると別の世界に行きその世界を救う星の者の一人となった、そこでの彼女は人間ではなく天使という種族であり。
 星の者の中でも特に強い力を持つ神星それもその指導的立場である三極星の一人であった。そのことを知ってだ。
 モスクワに出るとあれよこれよという間にモスクワとその周辺この世界のロシアのかなりの部分を治める者となった、そしてだった。
 この世界のことを知るとだ、彼女はモスクワ上空にある一つの浮島を見て言った。
「あの浮島には今誰もないな」
「はい、何もありません」
「只の巨大な岩であり」
「他には何もありません」
 仕える者達が答えた。
「左様です」
「そうした場所です」
「あの浮島は」
「そうか、ではだ」
 エカチェリーナはここまで聞いて述べた。
「あの浮島に宮殿を造りたい」
「宮殿ですか」
「あの浮島に」
「エカチェリーナ様の宮殿を」
「そうしたい、出来るか」
 エケチェリーナは廷臣達に問うた。
「それは」
「出来ます」 
 廷臣の一人が率直な声で答えた。
「この世界では」
「そうなのか」
「煉瓦や岩や家財道具を浮島まで空船で運び」
「人もやってだな」
「はい、そして」 
 そうしてというのだ。
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