第一章
[2]次話
何かの雫
ク=ホリンは戦死しその亡骸は低調に葬られた。だが後で彼の主であったロイガレ王威厳のある顔立ちで金髪と青い目を持つ見事な髭と長身が目立つ彼はその話を聞いて嘆いた。
「あの者はまだか」
「死ぬ運命ではありませんでした」
一人の預言者が彼に話した。
「ですがそれが」
「運命の悪戯でか」
「あの様になりました」
「そうであったのか」
「左様です」
「ではだ」
王は預言者からその話を聞いて彼に問うた。
「まだ生きている運命だな」
「はい、本来なら」
「それでは運命の時までだ」
本来死ぬべきというのだ。
「蘇らせてな」
「そうしてですか」
「運命の時までこの世にいてくれるだろうか」
「その様に出来るか」
「どうだろうか」
「それが出来る者は一人います」
預言者は王に答えた。
「パトリキウスという者ですが」
「その者がか」
「ウェールズに生まれ奴隷になりましたが」
しかしというのだ。
「今はキリスト教に入り」
「信者となっているか」
「修道士今は司教になっています」
「そしてその者ならか」
「はい」
預言者は確かな声で答えた。
「必ずです」
「ク=ホリンを蘇らせてくれるか」
「そうしてくれます」
「ではすぐにその者を呼んでくれ」
こう言ってだった。
王はパトロキウスを呼び寄せた、すると年老いているが背筋のしっかりした白い見事な髭のキリスト教の司教の服を着た者が来た。
その彼パトロキウスは王の前に来ると恭しく一礼し王は彼にク=ホリンのことを話した。するとだった。
パトロキウスは王にだ、穏やかだが確かな声で答えた。
「ではです」
「何とか出来るか」
「はい」
そうだと答えるのだった。
「蘇らせられます」
「そうなのだな」
「生きるべき運命なら」
そうであるならというのだ。
「神が必ずです」
「生き返らせてくれるか」
「左様です、それでは」
「あの者を蘇らせてくれ」
「そうさせて頂きます」
この時も王に恭しく言ってだった。
パトロキウスは教会を設けその中で神に祈った、するとだった。
ク=ホリンは埋葬されていた墓場から出て来た、そうして王の前に参上し片膝を着いてこう言った。死ぬ前と同じ若く美しく逞しい姿で。
「神のお力で蘇りました」
「司教の祈りのだな」
「左様です、これこそがです」
「神の力だな」
「キリストの」
「見事だ、ではこれよりだ」
王は生き返った英雄を見つつ笑顔で話した。
「あらためてそなたの名声を語り継ごう」
「私の働きをですか」
「そうだ」
まさにというのだ。
[2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ