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妻の肖像画
第一章

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              妻の肖像画
 その絵を観てだ、ベルギーのブリュッセルの中学生ハンナ=アイゼナッハ金髪の短い髪の毛に栗色の目の長身の彼女は言った。
「何かね」
「いい絵だな」
 兄で大学生で妹をそのまま成長させて性別を変えた様な外見の兄のアーダベルトが応えた、二人とも今は画廊にいてその絵を観ている。
「やっぱり」
「何処がよ」
 これがハンナの返答だった。
「一体」
「ルネ=マグリットはわからないか」
「あの、奥さんの絵って」
「これがな」
「何が何だかね」
 首を傾げさせながら言った。
「わからないわよ」
「だから現実にないものを想像して描く」
「シュール=リアリズムね」
「それがいいんだよ」
「そうなのね」
「それで僕も」 
 兄は自分のことも話した。
「大学は美大で」
「シュール=リアリズムよね」
「それを勉強しているんだ」
「実際に描いて」
「描くよ」 
 兄は強い声で言った。
「実際に」
「こうした絵を」
「そうしていくよ」
 こう言うのだった。
「既に描いているしね」
「わからないわね」
 妹は今度は口をへの字にさせて言った。
「こうした絵は」
「芸術はそれぞれだしね」
「ええ、それで私はね」
「こうした絵はだね」
「わからないわ」
 ハンナは中学の時にこんなことを言った、やがて成長して彼女は画廊で働く様になったが学校の先生になりつつ画家になった兄の絵を観てだ。
 その現実では有り得ない状況、髪の毛が果物の蔦、顔は様々な種類の果物をパズルの様に合わせて造られている女性の肖像画を見て言った。
「これ誰よ」
「お前の義理の姉さんじゃないか」
 兄は妹に笑って話した。
「わからないかい?」
「わかる様になったけれど」
 妹はこう返した。
「私も画廊で働いているから」
「色々な芸術に触れてね」
「こうした絵もわかる様になったら」
「芸術とだね」
「ええ、けれどね」
 それでもと兄に返した。
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