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抱き締められる狐達
第一章

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                抱き締められる狐達
 イギリスのウェールズで野生動物のリハビリ専門家であるジェフ=グルーコックは生きものの保護施設を運営している、髪の毛のない黒い目の大柄な老人である。
 その彼のところに一匹の雌の子狐が来たが。
「コン・・・・・・」
「随分弱ってるな」
「どうも毒を盛られたらしくて」
 彼女を保護したスタッフが暗い顔で話した。
「随分と弱っています」
「そうなんだね」
「大丈夫でしょうか」
「無理かも知れないがやってみよう」 
 グルーコックは確かな声で答えた。
「ここは」
「所長さんがですか」
「この娘を世話するよ」
「そうして下さいますか」
「そしてね」 
 そのうえでというのだ。
「この娘を助けるよ」
「そうしてくれますか」
「全力を尽くしてね」
 こう言って実際にだった。
 グルーコックはその子狐をスウィーブと名付けそのうえで世話をした、すると彼女は元気になってだった。
「コンコン」
「懐きましたね、所長さんに」
「そうだね、狐はあまり人に懐かないのに」
 グルーコックは彼女を抱き締めつつスタッフに応えた。
「私にすっかりね」
「そうですね」
「こうなるとはね」
「思いませんでしたね」
「野生の娘だから自然に返すつもりだったけれど」
 その考えだったがというのだ。
「ここまで人特に私に懐くと」
「自然に返せないですね」
「だからね」
「この施設で育てますね」
「そうするよ」
 スウィーブを愛し気に抱き締めつつ答えた、その顔は満面の笑顔でスウィーブもとても機嫌がよさそうだった。 
 その彼のところにだ、ロンドンで獣医をしているブロンドの長い髪の毛を後ろで束ねた美人が来た。目は青い。
「マーブル=フローズン、獣医をしています」
「エドワード=フローズン、マーブルの夫で同じく獣医です」
 茶色の短い髪の毛と栗色の目の端正な顔立ちの長身の男性も名乗った。
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