第二章
[8]前話
「猫、犬もな」
「十歳になれば」
「還暦なんだ」
それ位の年齢になっているというのだ。
「もうな」
「速いわね」
「そうだろ、人間とはな」
「また違うから」
「そうなるんだ」
「そういうことね」
「そしてな」
それにとだ、文太はさらに話した。
「そのことはちゃんとな」
「頭に入れることね」
「犬と一緒にいるならな」
「すぐ大人になる」
「ああ、小さくてもな」
ふわりの小さな体を見つつ話した。
「大人なんだ」
「実は」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「それがわかっていなかったのがあいつ等な」
「あの人達ね」
「俺達の前にふわりを飼っていた」
「そうよね」
「もうずっとな」
それこそというのだ。
「ふわりが小さいからな」
「おもちゃだって思っていたわね」
「喋るな」
「大人になっているとか思わないで」
「心があるのさえわかっていなくてな」
百合子に実に忌々し気に話した。
「それでだ」
「おもちゃにしか思っていなくて」
「産んだ子供達ですらそうで」
「飽きたらほったらかしね」
「それで捨てたんだ」
そうしたというのだ。
「何でもない感じでな」
「そうしたわね」
「ふわりは大人になっていたが」
「あの二人は子供のままだったわね」
「心がな」
「だからなのね」
百合子はあらためて言った。
「犬のそうしたこともわからなかったのね」
「そうだ、大きさじゃないんだ」
「小さい種類の子でもね」
「ちゃんと成長してな」
「大人になるのね」
「身体もそうでな」
「心もね」
こちらもというのだ。
「なるのね」
「そうだ、だからふわりはな」
「もう立派な女性ね」
「母親位のな」
「お姉ちゃんであって」
「そうだ、あの娘達にとっては歳の離れたな」
「優しくて面倒見のいい」
そうしたというのだ。
「いいお姉ちゃんね」
「そうだ、だから今度あの娘達のところに行ったらな」
その時はというのだ。
「ふわりも一緒に連れて行ってな」
「あの娘達と一緒にいさせてあげて」
「立派なお姉ちゃんとしてな」
「頑張ってもらうのね」
「ああ、そうしような」
「わかったわ、ふわりもそうしたいわね」
「ワン」
ふわりは顔を向けて明るい声で鳴いて応えた、その彼女を見て夫婦もまた笑顔になったのだった。立派な大人である彼女を。
小さくてもお姉ちゃん 完
2024・12・23
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