41:心の死
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だって……滑稽で滑稽で仕方がなかった。
――ボクから全てを奪ったヤツらが……その日の内にそいつらも全てを奪われ、挙句、無様に死んだのだから。
原因の分からぬ可笑しさに、腹と肩が震え、口から哄笑が漏れる。
気づけば……宿の客やNPCの店主にまで、不気味そうな目をボクに向けていた。
それでもこの笑いが治まらず……ボクは朝刊をカウンターに置き去りにして、宿を後にした。
肩を震わせながら、転移門広場への路地を歩き……その途中、思わず人気の無い角を曲がり、しゃがんでその場にうずくまる。
そして《ルビーの心》をオブジェクト化し、それをぎゅっと胸に抱く。
「っ、うぅっ……」
いつしか肩の震えは……涙の嗚咽のそれに変わっていた。
「ルビー……会いたいよっ……会いたいよぉっ、ルビーッ……」
ぼたぼたと涙が零れ、角を濡らしていく。
……悲しみは、ルビーを失った昨日から、なにも薄まってはいなかった。
◆
しかし、無情にもタイムリミットは確実に、刻一刻と近づく。
「だれ、か……誰か、た……助け……」
それからもボクは、ろくに休息も睡眠時間も取らず……
ふらつきながら、門を通り過ぎていく人達に、とっくに嗄れてしまった声をかけては手を伸ばしていく。
……彼らにとって、先日から微妙な気まずさや不気味さの注目を集めていたボクの姿は……やがて嫌悪のそれに変わっていた。
舌打ちをしながら、あからさまな無視を決め込み通り過ぎていく人がほとんどになった。
すれ違いざまに、わざとボクの体を煩わしそうに肩で突き飛ばす人が出て来るようになった。
要約すると「迷惑」「出て行け」「気味が悪い」などという暴言も吐かれた。
フードの奥のボクの顔を見抜いた男どもが、ニヤニヤと嫌らしい顔でボクを取り囲み、ボクの話も聞かず……卑しい目で舐める様に見てはしつこく下心のある誘いをかけられる事もあった。その時、誰も助けてはくれなかった。
終いには、伸ばした手を苛立たしげに、あるいは汚らわしそうに払われた。
「……………」
人々が通り過ぎていく中、とうとうその場に立ち続ける力すら失せ……その場にドサリと崩れ落ち、顔を伏せた。
そしてふと、自問する。
………………なんだこれは。
なんだ。この『醜い』世界は。
これが……ボクの信じてきた『人』達だったのか。
誰も……いやしないじゃないか。温かい人など。
これが、人なのか?
いや違う。
人は……『これ』だったのか?
この姿が、人の本質だったのか……?
「…………ひっ……!?」
ボクは戦慄の如く恐怖した。
ボクは今、とんでもないことを自問し
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