41:心の死
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見ている。
日が沈むと、背後の最寄宿ではレンガの壁越しに忘年会染みた実に楽しげな喧騒が届いてくる。ボクは、冷たい冬の風が吹き荒れる転移門の傍で、ただ口を開いて白い息を吐いては凍える両手を温め、立ち尽くす。
そして今日は、一部の人がちらりと目を合わせるだけで、話をしてくれる人は居なかった。
二日目。
元旦の早朝、転移門前へ出掛ける前に宿で朝刊を読むと……驚くべき記事が一面にあった。
その記事はいつにないほど大きく取り上げられ、びっしりと新聞を埋め尽くしている。
その表紙には……ボクだけを除いた、あのレイドパーティの集合写真が大きく取り上げられていた。全員が満面の笑みと、手にはそれぞれレアアイテムを掲げており……その中央、リーダーの手にはミストユニコーンの蹄と鬣が鷲掴みにされていた。
それだけではない。
……そのタイトルは、彼らのユニコーン討伐の成功を祝ったものではなかった。
――《殺人を名乗るギルド《ラフィン・コフィン》結成か。 初犯で数十人規模の一ギルドが全員犠牲に》
というタイトルの記事だった。
その記事の内訳はこうだ。
――昨日、大晦日の午前、あの超レアモンスターである《ミストユニコーン》の討伐に成功した団体が名乗りを上げた(表紙一面)。これでユニコーンの討伐は通算九体目となる。つまり、アインクラッドに現存するユニコーンはこれでついに残り一体のみとなった。
その団体は後に、ギルドを設立。ミストユニコーンの恩恵を一手に受けた、話題必至の中層小規模ギルドの誕生かと思われた。
しかし……悲劇は起きた。
その日の正午から、メンバー全員はギルド設立祝いの為に、フィールドの観光スポットで野外パーティを開いていた。
そこを《ラフィン・コフィン》と名乗る犯罪者ギルド約三十名が襲い掛かり、メンバー全員が殺害された。
そのギルド《ラフィン・コフィン》は本日、アイクラッドの主だった情報屋に、結成の告知を送付した。
告知内容は結成のものだけで、今後の犯行予告などはされていない。
その初犯から、数十名もの命を一手に奪うという……これは間違いなく、アインクラッド最悪のPKギルドの結成といえるだろう。
これを読む全てプレイヤーは身の回りの徹底的な安全対策と、そして《攻略組》による極めて早急な対策が望まれている。
以下は、現状で最善と思われる、PKから身を守る安全対策を特集してある。ぜひ参考にしてほしい。
………………
…………
……
…
「……あははっ」
ボクは小さく笑っていた。
自分でも驚くほどに、冷たい笑い声だった。
……なにも、憎きあの人達が死んだことに喜んでいるわけではない。
わけではないと……思う、のだが……。
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