第六章 贖罪の炎赤石
第二話 姉妹
[4/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
向に向かって歩き出す。朝露で濡れ、泥濘んだ柔らかな土の上を歩くうちに、聞こえてくる音は大きく、そして多くなっていく。
「これは……もしかして……」
音源に近づくにつれ、音の形が明確になっていく。
ハッキリと形となっていく音に、カトレアは覚えがあった。それどころか、気付けば小さな頃から身近にあった音。母親である公爵夫人が時折響かせるそれは……。
「……すご……い」
ざらつく木に手を添え、顔を向けた先にあったのは、ふた振りの剣を振るう剣士の姿。枝葉の隙間から、微かに差す星明かりに照らし出された剣士は、ゆっくりと緩やかに動いているように見えるが、その実、瞬きした瞬間、視界から消えてしまうほどの速さで動いている。剣士が持つふた振りの剣もそうだ。空に絵を描くように振るわれる双剣は、複雑に動き、振るわれる腕が絡まらないか、見ているとハラハラしてしまう。
でも……とても綺麗……。
聞こえるのはただただ、双剣が空を切り裂く音だけ。濡れた地の泥が泥濘む音も、湿った土が落ちる音も……何も聞こえない……。
それは、まるで幻……。
剣と共に行われる幽玄な舞い。
暗い森の闇の中、剣と共に踊る彼は酷く現実感がなく、それは、まるで夢を見ているかのようで……。
剣士が不意に立ち止まる。
「……信じる……か」
剣を持ち立ち尽くしていた剣士から声が漏れ、幻が急に現実味を帯び始め……暴風が吹き荒れた。
「……信じていた……ッ!」
悲鳴に似た声と共に、再度剣が振るわれ始める。
始まったのは……破壊。 剣が振るわれる度に、破壊させる大地。
剣は何にも当たっていない。
にもかかわらず、双剣が振るわれる度に地が裂け、ズッシリと地に根を張る木々が揺れ葉が散り、枝が折れる。
「……俺は……ッ! ……ッ!」
剣士が泥濘む大地を踏み込むと、大量の土砂が空を舞い、泥が雨のように降り出す。
泥が空を覆い、森の中にか細い星明かりさえ消えるが、カトレアが剣士の姿を見失うことはなかった。
何故ならば……
「……光り、が」
闇の中に、鈍く輝く光が生まれていた。 光はギラギラと輝き、闇を照らし出す。
「……ッ!! 守られてばかりだッ!!」
光は線を描く。
残光が消える一瞬のうちに、闇に光の絵が描かれる。
「……っぅ……ぁ」
剣士が何かを叫ぶたび、カトレアは胸を抑える。
刃物が突き立てられるかのような鋭い痛みが走り、喘ぐような呼吸に小さく速く変化していく。
壊れる……壊れてしま
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ