第六章 贖罪の炎赤石
第二話 姉妹
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、掛かって……その……それで……」
ラ・ヴァリエール公爵家の三姉妹の次女、カトレアがそこにいた。
目を覚ました時、外はまだ暗かった。
毛布を寄せ、目を閉じるが眠りに落ちる感覚は遠い。小さく溜め息を吐くと、ゆっくりと身体を起こす。ベッドの上や、部屋の隅に眠る子犬や子猫。天井からぶら下がる鳥かごに眠る小鳥を起こさないよう部屋の中を歩き、音を立てないよう注意しながらドアを開ける。
「……ちょっとお散歩に行ってきますね」
所々に魔法の明かりが設置されている廊下を通り抜け、カトレアは城の外に出る。
外に城の明かりは届かず、夜明け直前の空に明かりは少ない。しかし、城の周りは子供の頃から良く利用していたカトレアには、明かりがあってもなくてもそこまで問題はなかった。そのため、カトレアは臆することなく何時もの散歩コースの針葉樹の森の中へ歩き出す。
空からの微かな星明りさえ遮られた暗い暗い森の中を歩くうち、カトレアの脳裏で昨夜ルイズと話していた彼のことが思い出されていた。
「……矛盾しているようで……矛盾していない人」
初めて彼を見た時感じたもの……冷たく乾いた心と暖かく柔らかな心……。
一体どんな人なんでしょうか。
初めて会った時、冷たい氷で胸を刺されながら、柔らかく包み込まれたかのような、そんなある意味暴力的な感覚に戸惑い、恐怖し……馬車の中では結局話すことは出来なかった……。
……馬車の中、時折盗み見ていたけど……ルイズを見る彼の目はとても優しかった……。
ルイズも喧嘩をしているって言っていたけど、不意に彼を見る時の目は柔らかく暖かかった……。
心を感じなくてもわかる……ルイズが彼をどれだけ信頼し信用し……そして、愛しているのが……。
でも……馬車の中の動物たちは、彼に怯えていた。
あれは……小鳥が猫に怯えるように……犬が狼に怯えるように……絶対に勝てない脅威に対するものだった。虎も、熊さえ……彼に怯えていた。
……わからない……どちらが本当の彼なのか……。
「……こんなの初めて……全然わからないなんて……ぁ……れ……ここ、何処かしら?」
顎に手を当て、小首を傾げる。
考え事をしていたからか、何時の間にか整備された道を外れ、見覚えがない場所に立っていた。とはいえ、枝葉により更に暗くなった森の中は、十メイル先もよく見えない。もしかしたら、見覚えがあるかもしれないが、これだけ暗ければ同じこと。どちらに行けばいいかわからず、顔を回していた時だった。
「……ん? ……何でしょうかこの音?」
微かに耳に入り込む、鳥の甲高い鳴き声にも似た音。
どちらに行こうかと迷っていた足が、誘われるように音が響いてくる方
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