第六章 贖罪の炎赤石
第二話 姉妹
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り返った士郎の目に、口元に小さな笑みを浮かべながら立つカトレアの姿が映る。
「……聞き忘れていたことがありました」
「聞き忘れていたこと?」
「はい」
「それは――」
「シロウさん……あなたは何故、生きていられるのですか……そんなぼろぼろの心で……生きて……笑っていられるのですか……」
士郎の言葉を遮ったカトレアは、小さく震える声で問いかけた。
カトレアは俯き、今どんな顔をしているのかわからない。
「……」
「あなたは何故……笑えるのですか」
「…………さあ、俺にもわからないな」
「えっ?」
震える声に水音が交じった問いかけに、士郎は小さな笑みを浮かべて答えた。士郎の答えに、カトレアの顔が上がる。カトレアの目は、濡れ潤み……端から細い川が流れていた。
「わか、らない……とは?」
「俺がボロボロになりながらも生きていられるのも、そんな状態で笑っていられる理由も……正直なところわからないな」
「そう……ですか」
「ただ」
「え?」
「ただ、一つだけ知っていることがある」
「知っているですか?」
「……俺が生きて笑っていると、笑ってくれる人たちがいるということを」
何処か照れるように笑う士郎の顔を、カトレアは大きく見開いた目で見つめる。
「わら……って」
「そうだ……笑ってくれる奴らがいる」
自分の言葉に苦笑を浮かべた士郎は、浮かんだ笑みを隠すように顔を片手で覆うとカトレアに背を向けた。士郎は「それじゃあ」と、残った片手を上げ、カトレアから離れだす。どんどん小さくなっていく士郎の背中に、
「シロウさんっ!!!」
大きなカトレアの声がかけられた。
「何だカトレア?」
「わたしも……」
「ん」
「わたしも……わたしもっ! 笑います!!」
「カト、レア?」
「わたしもっ! シロウさんが生きて笑ってくれると……わたしも笑いますっ!!」
激しく高鳴る心臓を抑えるように、強く胸を押さえつけながらカトレアは叫ぶ。
真っ赤な顔を満面の笑みに変え。
心の底から笑いながら。
「だからシロウさんっ!! 生きて……生きて笑っていてください!!!」
「……ああ、了解した」
士郎は片手を高く上げ応えると、ゆっくりと歩き出す。
カトレアはどんどん小さくなっていく士郎の後ろ姿を見つめている。
夜が明けても未だ残る森の闇の中に士郎が消えるまで見つめていたカトレアの鼻に、あの匂いが触れてきた。
「……ぁ……ふふ……」
くんくんと鼻を鳴らし匂いの発生源に気付いたカトレアは、自分の身体を抱きしめるように腕を回すと小さく呟く。
「……シロウさんに抱かれているみたい」
自分を包む服に残った士郎の残り香を嗅ぎながら、カト
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