第一章
[2]次話
定食屋に行かないと
栗橋多喜男の家は定食屋だ、オフィス街にありいつも繁盛しているが。
高校時代クラスメイトの羽田雅美にだ、笑ってよくこう言われた。
「あんたソース臭いわよ」
「豚カツ定食のあれか?」
「昨日はお味噌でね」
「お味噌汁のか」
「お家の匂いさせてね」
黒髪をツインテールにして小柄で猫の様な顔の彼女に言われるのだった、栗橋自体は一七二程の背で痩せている、小さい目と薄い唇を持ち黒髪はショートである。
「今日はそれよ」
「美味そうな匂いかな」
「お陰で今日豚カツ定食食べたくなったわ」
「学食でだよね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「オフィス街だからお昼よね」
雅美は栗橋に問うた。
「忙しいのは」
「そうだよ」
栗橋もそうだと答えた。
「それでお昼はね」
「あんた学校にいるから」
「お店の匂いしないよ」
「あれね、お父さんお母さんが働いていて」
店でというのだ。
「その匂いがね」
「身体に滲み付いて」
「お家に持って来られてるのよ」
「そうなんだ」
「ええ、まあいいんじゃない?」
雅美はいつも笑ってこう言った。
「別に臭くないし」
「美味しそうな匂いで」
「そんなこと言ったらね」
「何だよ」
「私お家カレー屋さんでしょ」
自分のこともだ、雅美は話した。
「そうでしょ」
「ショッピングモールの中の」
「お手伝いもしてるし」
「じゃあカレーの匂いするね」
「するでしょ」
「時々ね」
栗橋も否定しなかった。
「そうしてるし」
「だったら」
「そう、食べものの匂いするなら」
それならというのだ。
「いいわよ」
「そう言うんだね」
「別にね、じゃあ今日私お昼はね」
「豚カツ定食だね」
「それにするわ」
「じゃあ俺はカレーかな」
雅美の家の話を受けて決めた。
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