第一章
[2]次話
医者でもあり看護士でもあり
岡本安吾は八条病院札幌で看護士をしている、だが外科医の真弓晶子からはどうにもという目で見られ直接言われてもしている。
「何で看護士しているの?」
「またそれ言う?」
「言うわよ」
長い黒髪を後ろで編んだ面長の顔で大きなはっきりした二重の目と濃い眉に赤い大きな唇を持つ長身の彼女は面長で優しい顔立ちで自分より十センチは高い黒髪をショートにした彼に強い声で言うのだった。
「大学の同期なのに」
「その頃からの付き合いだから」
「そうよ、あんた医学部でね」
「内科医の資格あるんだよね」
「それでよ」
岡本にどうにもという顔で言った。
「何で看護士してるのよ」
「お医者さんじゃなくて」
「医師免許取った後でね」
「そっちの学校行ったからね」
「しかも働きながらね」
「大変だったよ」
岡本は真弓に笑って話した。
「本当に」
「そのまま就職したらよかったでしょ」
「お医者さんに」
「そうしたらよかったのに」
それがというのだ。
「どういう訳かね」
「いや、好きだから」
「看護士が?」
「だからね」
「それいつも言うけれど」
病院の喫茶店で一緒にコーヒーを飲みながら話した。
「わからないわ」
「好きになることに理由があるっていうんだね」
「それに理由がないなんてね」
よく言われる言葉はというのだ。
「間違いよ」
「その実は」
「そう、それでね」
「僕もだね」
「何で好きになったのか」
看護士の仕事がというのだ。
「わからないわ」
「それを言うとね」
岡本は笑って答えた。
「僕大学の時スキーで骨折したね」
「それで入院したわね」
真由美は冷静に返した。
「暫く学校に来なかったからね」
「事情聞いてお見舞いに来てくれたね」
「一ヶ月だったわね」
「正直参ったよ」
「怪我には気を付けなさいね」
こうも言う真弓だった。
「本当に」
「反省しているよ」
「それでその時に」
真弓はコーヒーを飲みながら話した。
「看護士に親切にしてもらったのね」
「随分とね」
「そしてその仕事ぶりに感動した」
「だからなんだ」
岡本は微笑んで話した。
「医師免許は絶対にって思っていたけれど」
「看護士さんになりたいって思ったのね」
「そうなんだ」
「成程ね、それはわかったわ」
岡本に真面目な顔で応えた。
「そういうことね、ただね」
「ただ?」
「大丈夫なの?」
今度は目を鋭くさせてだ、真弓は言った。
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