第一章
[2]次話
日本に鰐はいるか
エジプトから日本に仕事で来たアイーシャ=サラシーク浅黒い肌に彫のある顔立ち、切れ長の大きな二重の目に黒く腰まである長い髪の毛を持つ小柄で抜群のスタイルを持つ彼女は今は取引先の社員である新田聖子黒髪をショートにしていて楚々とした顔立ちでアイーシャよりも小柄な彼女に対して祖国のことを話していた。
「やはりエジプトはナイル川で」
「ナイルの賜物ですね」
「はい、あの川がありまして」
それでというのだ。
「何もかもがあります」
「歴史でもそうですよね」
「エジプトになくてはならない川です。ただ」
聖子の会社の喫茶コーナーで仕事の後の会話の中で話した。
「困ったこともありまして」
「洪水の時期がありますね」
「はい、そして鰐がいます」
「ああ、ナイルワニですね」
鰐と聞いてだ、聖子はすぐに答えた。二人共膝丈のタイトスカート姿で如何にも仕事をしている女性といった身なりである。
「あの鰐は大きくて」
「気性も荒くてです」
「人を襲いますね」
「古来からです」
それこそというのだ。
「エジプトはあの鰐には悩まされています」
「いいことばかりじゃないですね」
「うっかり近付いて」
鰐にというのだ。
「お水を飲んだり汲もうとすれば」
「襲われて」
「そしてです」
そうなってというのだ。
「最悪食べられます」
「そうですよね」
「はい、ただ」
ここでだ、アイーシャは。
強張った顔になった、そのうえで聖子に尋ねた。
「日本にもいますね」
「鰐がですか」
「はい、いますね」
「いませんよ」
聖子は首を横に振って否定して答えた。
「鰐なんて」
「いえ、ですが」
それでもとだ、聖子に言うのだった。
「兎が鰐に襲われたとか」
「兎ですか」
「海を渡る時に。それで皮を剥がれて海水でその体を洗った」
「ああ、因幡の白兎ですね」
聖子は海水で洗うと聞いてわかった。
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