第二章
[8]前話
実際に妻が自分達の子供を出産するのを待った、そして実際に出産したと聞いてその子供に会ったが。
「元気な男の子です」
「よかったよ」
「ええ、本当にね」
ベッドに寝ている妻は満足している顔で答えた。
「無事に産まれてね」
「元気でね」
「何よりよ。帝王切開でもね」
「元気に産まれたら」
「そしてお母さんも無事ならね」
「いいよね」
「ええ、お腹を切ることになっても」
それでもというのだ。
「その時はお医者さん達を信頼する」
「そうすることが大事だね」
「そうよ、それじゃあね」
「うん、君が退院したら」
「後は育児頑張りましょう」
「二人でね」
夫婦で笑顔で話した、そしてだった。
仲よく二人の子供と共に退院して育児に入った、息子は十蔵と名付けられすくすくと育った。そしてだった。
「まさかな」
「俳優それも舞台俳優になって」
宏昌と宮子、今ではすっかり歳を取った二人は成長した息子の舞台を観客席から観ながらそのうえで話した。
「シェークスピアの作品に出るなんて」
「思いもしなかったね」
「ええ、けれどね」
妻はそれでもと言った。
「考えてみたら」
「この舞台マクベスでね」
「あの子マクダフの役だけれど」
「マクダフはね」
「ええ、帝王切開で生まれてるのよね」
「そうだよね」
「マクベスはそうして生まれた人でしか倒せないけれど」
それでもというのだ。
「マクダフはまさにそうした人だから」
「マクベスを倒せたよ」
「女の人のお腹から生まれた人では倒せない」
「そう予言されていたけれど」
「それであの子がね」
「まさにその人だっていうから」
夫に笑って話した。
「縁ね」
「これもね」
「本当にそうよね」
「面白い縁だよ」
妻に笑って話した。
「これも」
「本当にそうね」
夫婦で笑顔で話した、観れば成長した息子は今まさにマクベスを倒した。その場面を観て皿に笑顔になるのだった。
帝王切開 完
2024・12・17
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