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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#13
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いく魔獣の右腕だった。肉片は地面に落ちた拍子に、さらに崩れて────魔獣の足元に散った。

 それは、黒ずんでいたものが濃さを増している上に微かに燻っていて、さながら消し炭のようだった。肘までしかない魔獣の右腕も、傷口付近が焦げた跡みたいになっている。

 この状況に加えて、あの眩い光と弾けるような音────先程のあれは、おそらく雷撃だろう。もしかして、レド様が────?

 魔獣の傷口から血が滴るのが見えて、私は我に返る。このままでは、腕を修復されてしまう。

 私が動き出す前に、左方向から一つの人影が躍り出た。焦げ茶色の髪を後ろに撫で付けた大柄なその人物は────ラムルだ。足元には、【身体強化(フィジカル・ブースト)】の魔術式を展開させている。

 ラムルは地を蹴って軽々と跳び上がり、右手に持った瓶の中身を魔獣の傷口にぶちまけた。ラムルが握る空き瓶には見覚えがあった。あれは支給品の“ポーション”だ。

 魔獣の傷から覗いていた肉が盛り上がって、剥き出しだった血管や骨などを包み込み、傷口を塞ぐ。焦げ跡も消え失せ、魔獣の右腕は、まるで最初から肘までしかなかったかのようだ。

 奔り出した私は、着地したラムルと擦れ違いざま眼が合う。

 無事で良かったとか、助かったとか、後は任せてとか────色々と言いたいことはあったけれど、今は視線を交わすに留める。

 迫りつつある私に気づいた魔獣が、私を薙ぎ払おうとその禍々しい左手を振るう。だけど、私は構うことなく奔る。

 魔獣の左手が私の右半身に届く寸前────後ろから駆け込んできた人物が割って入った。その人物───ディンド卿は、大剣を魔獣の左手に叩きつけた。

 続いて、もう一人───駆け込んだレナスが【冥】を叩きつけて、ディンド卿と共に魔獣の左手を押し止める。

 魔獣は左手を振り上げようとしたが、左手の向こう側に回り込んでいたヴァルトさんが、両手剣を振り下ろし押さえ込む。

 魔獣の懐に入った私は、右方に両手で構えた【誓約の剣】を大太刀のままの【聖剣ver.9】に替え────刃を魔獣の脇腹に食い込ませた。

 右手を失い、左手を押さえられた魔獣は、右足を私に向かって叩き込もうとするも、【回帰】を発動し終えたラムルの大剣に阻まれる。

「く…っ!」

 【魔力循環】と【魔力結合】、それに【身体強化(フィジカル・ブースト)】を発動させて────これ以上ないほどの渾身の力を籠めているにも関わらず、先程同様、刃が進まないどころか押し戻されそうになる。

 【(インサイ)(ト・アイズ)】を発動させるまでもなく、傷口から溢れ出る赤黒い血が凍り付くように凝固して、刃を押し返しているのが見えた。

 私は大太刀を魔獣に食い込ませたまま、視線を回
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