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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#11
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イト》の正装】を起動したときほどではないが、【聖剣】の形状を変えるだけでも意外と魔力を使う。これは、早いところ決着をつけなくては────

「!」

 魔素と魂魄が私を追い抜くように、魔獣に向かって吹き込む。一足先に着地した魔獣が、間髪入れずに衝撃波を放った。

 まだ着地していなかった私たちは正面から直撃され、再び吹き飛ばされた。

 先程に比べ衝撃自体はそれほどでもなかったが、宙に浮いていたせいで身体が煽られ、体勢が大きく崩れる。何とか着地できたけど、後ろに倒れそうになって、咄嗟に屈み込んで手を突いた。

 ほっとしたのも束の間、体重の差か私より先に着地していたレド様とレナスが、魔獣の大剣に薙ぎ払われた。まだ体勢を整えきっていなかった二人は、魔獣のその一振りで吹き飛ぶ。

「レド様!レナス!」

 一瞬、吹き飛ばされた二人に気を取られたのが(あだ)となった。立ち上がろうと腰を浮かせたときには、眼前に黒い魔獣が寸足らずの大剣を右手に持ち佇んでいた。

 右肩につきそうなほど首を傾け、渦巻く暗雲のような濁った眼で私を見下ろす魔獣を目にして湧き上がったのは、焦りでも恐怖でもなく────既視感。

 記憶の中の光景が、眼の前の光景に重なる。


 ゼド兄さんから奪った両手剣を、まるで片手剣のように右手に持ち佇み────右肩につきそうなほど首を傾げて濁った眼で私を見下ろす、茶色の毛に覆われたオーガの魔獣。

 倒れ込むゼド兄さんたちを護ろうとして両手の短剣で斬りかかった私は、あっさりと弾かれて尻餅をつき、立ち上がる間もなく────同じように、こうして魔獣が両手剣を振り下ろすのを見ていた。

 あのときの私は、魔力を廻らせて身体能力を底上げしていても、まだ幼い身体では魔獣には対抗できないことも────両手に握った安物の短剣では、魔獣に傷を負わせることはできないことも悟っていて────もう、なすすべがなかった。


「リゼッ!!」
「リゼラ様ッ!!」

 レド様とレナスの声で、私は我に返った。

 記憶の中ではない───今そこにいる黒い魔獣の剣が、私に迫る。私が咄嗟に【聖剣】を掲げようとしたそのとき、右方向から突き出された大剣が、魔獣の剣を弾き飛ばした。

 私の前に躍り出た二人の人物の後ろ姿が、また記憶と重なる。


 あのとき、私を助けてくれたのはファルリエム辺境伯だった。共に剣を構えた辺境伯の従者は────あれは、髪型も雰囲気も違うけれど、おそらくベルネオさんだ。


「ラムル!ジグ!」

 レド様が、私の前に立つ二人の名を呼ぶ。その声音には安堵が滲んでいた。

 不意に魔獣が左方向に身体を反転させて、魔獣の背後から近寄っていた人物───ヴァルトさんに向かって横薙ぎに剣
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