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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#11
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吐いた。そして、私に視線だけを寄越す。

「リゼ───『討伐するには【聖剣】以上の武具が必要』とあるが、あの剣は棍棒とは違うものか?」
「……いえ、素材も性能も同じようです」
「では、俺の剣が折られることはないんだな?」
「ええ、そのはずです」

 レド様は視線を黒い魔獣へと戻すと、改めて両手で握った大剣を構える。

「俺があの剣を押さえ────隙を作る。リゼは止めを」
「解りました」

 レド様には頷いたが、携えている太刀は、まだ【聖剣】には替えない。

 不意に、黒い魔獣が雄叫びを上げた。それは、ただの声とは思えないほど空気を揺さぶりながら、辺りに轟き渡った。

 眼前に聳えるその異様な魔獣を、私は改めて見上げる。

 この戦いで─────いや、これまで相(まみ)えた魔獣の中でも、最強の敵─────

「では…、行こうか────リゼ」
「はい、レド様」


◇◇◇


 太刀を短剣に替えようとして、止める。何故なら────これまでとは違い、黒い魔獣の正面には【結界】が張られていないからだ。

 私は試しに【疾風刃(ゲイル・ブレイド)】を放つ。『生半可な魔術は通用しない』という記述通り、私が放った風刃は、黒い魔獣の腕に当たったものの────傷つけることなく、掻き消えた。

 黒い魔獣は、そうなることを解っていたのだろう。避ける素振りすら見せなかった。

 これはすなわち、攻撃する度に【結界】を崩す必要はなくなったけど、もう短剣や魔術の波状攻撃では敵の気を逸らすことはできない、ということ────

「ッ?!」

 不意に、強烈な殺気に襲われる。私は咄嗟に【身体強化(フィジカル・ブースト)】を発動して、後ろに跳び退こうとしたが間に合わない。

 地を蹴った直後には、その禍々しい剣先が眼前に迫っていた。太刀を抜き放つには、距離が近過ぎる。太刀を抜身の対の小太刀へと替えて、何とか剣を受けた。

 しかし、弾き返すにしろ受け流すにしろ、足が浮いている状態ではろくに力を籠められない。それでなくとも高い身体能力をさらに強化された魔獣の膂力には耐え切れず、私は吹き飛ばされた。

「リゼッ!!」

 レド様の切羽詰まった声は聞こえていたが、それどころではなかった。

 どうにか転倒することなく着地できた私は、追って来た黒い魔獣の大剣を対の小太刀で迎え撃つ。

「く…っ!」

 【魔力循環】と【魔力結合】の効果で身体能力が上がっているのに加えて、さらに【身体強化(フィジカル・ブースト)】を発動させた上で、渾身の力を籠めているはずなのに────大剣は弾き返せそうにない。

 僅かに右腕を引いて、魔獣の剣の軌道を右方向へとずらす。上半身を右方向に捻ると、ずれは大きく
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