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一人のクレーマーが
第二章

[8]前話
 慎重に意見を聞いて情報を集め考えた、寺の中でもじっくりと会議を重ね。
 除夜の鐘を続けることにした、結果苦情を言ったのは。
「一件だけだったな」
「近所で有名なクレーマーでしたね」
「あちこちに文句ばかり言うな」
「勤め先でも嫌われ者の初老の男の人でしたね」
「門多隆宏というな」
「はい、その人だけで」
「おかしな人ということでな」
 そうした輩の意見だとわかってというのだ。
「話は収まった」
「そうですね」
「それでだ」 
 銀光はさらに話した。
「かえってその人が批判されてな」
「終わりましたね」
「そうなった、そうした意見が出てもな」
「すぐに中止とかしたらよくないですね」
「慎重に調べて話を聞いて考えてだ」
「決めることですね」
「一人のクレームで全てが決まるとな」
 そうなると、というのだ。
「世の中はおかしくなる」
「そうですね」
「だから今回はこうしたが」
「これからもですね」
「そうしないと駄目だな」
「除夜の鐘だけでなく」
「他のこともな」
 こう青光に言った、そしてだった。
 除夜の鐘は続けられた、その決定に近隣の殆どの人が喜んだ。そうして一人のクレーマーだけが批判された。誰もが大団円だと思った。


一人のクレーマーが   完


                   2024・12・15
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