最強の目
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昇竜突破が放たれた。
だが。
「嘘だろ!?」
龍騎と同じ感想を、可奈美も抱いた。
炎の奔流を難なく切り開いた市長は、そのまま龍騎の前に躍り出る。
「っ!」
龍騎は思わずドラグクローを防御として盾にすると、市長のサーベルはばっさりと龍の籠手を切り飛ばした。
そして市長は、そのまま丸腰の龍騎へ斬りかかる。
「ぐあっ!」
大きく揺らいだ龍騎。
続く彼の蹴りは、龍騎の鎧で包まれた体を軽々と吹き飛ばす威力を誇り、芝生の上を転がっていく。
その間にも、龍騎の姿は真司に戻っていた。まだ気絶はしていないが、立ち上るのすら困難なほどのダメージを受けているようだった。
さらに追撃しようとする市長へ、今度はドラグレッダーが食らいつこうとする。
ドラグレッダー自身の意思に違いない。人間を餌として食らう習性があるミラーモンスターは、市長をその胃袋に収めようと大口を開く。
だが市長に焦りはない。たとえ相手が巨大な龍であろうとも、手にした剣を引いていた。
そして。
可奈美には、見えた。
迅位もかくやと思うような速度で、彼がドラグレッダーを切り刻む姿が。
ドラグレッダーの悲鳴。
大空に轟くような咆哮とともに、無双の名を持つ龍は地に落ちる。
「くっ……」
写シの恩恵で、可奈美はまだ戦える。
フラフラの体で立ち上がる可奈美を、市長はじっと見据える。
千鳥を構えなおした可奈美は、大きく息を吐いた。
「ふむ。刀使の力は見せてもらったが……次は君自身の力を見せてくれるというのかね」
彼の言葉は、もう可奈美に届かない。
全身に宿る興奮を抑えながら、可奈美は駆け出す。
刀使の速度でも、やはり市長の目は可奈美の動きを捉えている。打ち込む可奈美の剣も、全て受けきられていく。
「素晴らしい剣技だ」
市長はそう賞賛した。
だが、何度打ち込んでも返される。やがて、市長も可奈美へ攻撃を開始した。
「っ!」
新陰流の動き、その他の流派の動き。あらゆる手段を駆使して、可奈美は彼の攻撃を捌いていく。だが、刀使の力で上乗せしたとしても、明らかに彼の力量は可奈美の剣術を超えている。
「なるほどな。君にはどうやら最強の剣術があるようだが……」
市長は可奈美の剣を受け止めた。さらに、千鳥の刃先を地面に突き刺させ、左手でその眼帯を外して見せた。
「生憎、私には最強の目がある」
そして露わになる、彼の目。
その瞳は、可奈美が見知る如何なる瞳とも異なっていた。
赤い蛇が自らの尾へ食らいついている瞳。その特異な瞳に、可奈美は思わず息を呑んだ。
「……っ、迅位!」
可奈美は逃げるように加速。
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