紛い物
[1/8]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
その日。
平日の見滝原公園には、お年寄りや子供たち、もしくは平日を休日に指定している会社員の姿が多い。
だが一方で、遊歩道から奥に逸れた森林区画には、早々人は立ち入らない。だからこそ、ここは可奈美の剣の鍛錬にはもってこいの場所だった。
「行くよ、真司さん!」
「っしゃあ! 手加減しないぜ!」
白い霊体となっている可奈美は、目の前の赤い鉄仮面を見つめる。
龍騎。
城戸真司がカードデッキを使って変身した戦士だ。その手にしたドラグセイバーが、陽の光を反射して眩しい。
「可奈美ちゃん! 真司さん! どっちも頑張れ!」
応援しているのは、近くのベンチに腰を掛ける友奈。
剣を持たない彼女は、どうやら家で弁当を作って来たようで、膝元には弁当かごが置かれていた。
「おりゃあああああああああ!」
龍騎は、叫びとともにドラグセイバーで斬りかかる。
可奈美が習得している新陰流は、相手の攻撃を受け流すのを主とする。
龍騎のドラグセイバーを受け流し、龍騎の鋼鉄のボディに火花を散らす。さらに、龍騎の青龍刀を千鳥で受け止め、逆に彼の手に向けて千鳥を振り下ろす。
「ぐあっ!」
ギリギリ彼の防御が間に合った。千鳥は龍騎の腕のアーマーから火花を散らしたが、大きなダメージにはなっていない。
「まだまだっ!」
龍騎はそのまま、ドラグセイバーを振るう。
もしも直接正面から打ち合えば、力量の関係で龍騎に敵わない。ドラグセイバーを受け流しながら、可奈美はそう確信する。だが、主体攻撃を主とする龍騎と、受けて流す可奈美の新陰流では、可奈美の動きに分があった。
「やっぱり……真司さん、すごい! 本当に剣、習ってないの?」
「ん? ああ、前の世界でそれどころじゃなかったからな。全部自分で覚えたぜ」
可奈美と龍騎は打ち合い続ける。可奈美の斬撃を受け止めた勢いを利用し、体を回転する。果たしてどんな剣が出てくるのかと身構えていると、放たれた蹴りに可奈美は対応できず、地面を転がった。
「剣じゃないの!?」
地面に付けた顔を上げながら、可奈美は叫んだ。
「え? いや、こういうのって剣だけ持ってればいいのかと……」
「あ、そ、そうだよね。真司さん、剣術とかじゃないからね……」
可奈美は起き上がる。再び千鳥を構え、
「じゃあ、今度はこっちから行くよ!」
迅位は使わない。あくまで、自らの足で、龍騎へ剣を放つ。
「っしゃあ! 来い!」
龍騎は気合を入れ、可奈美の剣を受け止めた。
「ぐっ!」
「本当に凄いよ真司さん! いい師匠に教われば、絶対にもっといい剣になるよ!」
「だったら、今は可奈美ちゃんが俺の先生、かな!」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ