指輪
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
したね。そこの本棚にあります。読んでいただいても構いませんよ」
「ありがとうございま……」
礼を言い終えようとしていたところで、ハルトの動きが止まった。
「……教授。そこの本棚って……どれですか?」
「ええ。それです」
ハルトが指差したのは、はたして本棚と認識できるかどうか微妙な壁だった。
おそらく本棚の枠組みなのであろうものは上半分しか確認できない。下半分はやはり、資料に埋もれて確認できない。
「結局片付けを終わらせないと、何も進まないわけね」
ハルトはがっくりと肩を落とす。
教授は首を動かす。彼の仮面が無ければ、きっと表情の変化が見れたのだろうが、声色を含めて教授に変動はない。
「お願いします。ああ、私は奥で研究を続けていますので、また何かあったら声をかけてください」
「分かりました。……よし! じゃあ、俺の興味を満たすためにも、さっさと終わらせよう!」
「はい! 蒼井も頑張ります!」
教授は再び、研究室の奥へ姿を消した。
ハルトとえりかは同時に気合を入れ、特にハルトは袖を拭い、いざ足を踏み出そうとしたとき。
「お兄ちゃん、今日もお手伝い?」
「そうだよ。お父さんも大変だからね」
ハルトがそう言うと、結梨は頬を膨らませて俯いた。
「どうしたの?」
「ここ最近、教授は本当に忙しくしていて、結梨さんに構っている時間も無さそうでしたし……」
「ああ……」
えりかの解説に、ハルトは頷いた。教授が去って行った方向と結梨の顔を見比べ、頭を掻いて頷いた。
「まあ、いっか。別に読もうと思えばいつでも読めるし」
ハルトはしゃがみ、結梨と目線を合わせる。
彼女のくりくりとした目は、ハルトの動きに合わせて目を
「じゃあ、今日は一日中、結梨ちゃんがやりたいことをやろうか! 教授には、今日は難しかったってこと伝えておくよ」
「いいと思います。教授もそんなに急いでいませんし、きっと問題ないですよ」
えりかはそう言って、ハルトの隣で腰を落とす。
「じゃあ、何やろうか? この前とは違う、新しい手品を……」
ハルトはコネクトの指輪で大道芸の道具を取りだそうとするが、それよりも先に結梨がリクエストを発した。
「お外行きたい!」
漠然と外出を希望され、教授からも許可をもらった後、ハルトとえりかは共に結梨の手を取り、見滝原の夜を散策していた。
「まあ、わざわざラビットハウスまで行くのもね……近場で何かあるかな」
「お兄ちゃん、魔法見せて!」
結梨はそう言いながら、自らの指に付けてある指輪をハルトに見せつけた。
「あ、それまだ付けてくれてるんだ」
「私も魔法使うよ! 今日から魔法使い!」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ