指輪
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そうです。あ、結梨ちゃん、暴れないで……」
「ふーん……」
結梨に悪戦苦闘しているえりかを横目に、ハルトは手に持ったままの本に目を落とした。
「生と死……」
ふと、その題名が目に入り、ハルトは動きが止まった。
「松菜さん? どうかしましたか?」
「いや、最近このキーワードについて引っかかったことがあるような……」
ハルトはしばらく、その場で固まっていた。無数の文字が記されているのに、そのワードだけが妙に光って見えた。
やがて、ハルトの口は自然と次の言葉を紡ぎ出していた。
「賢者の石……」
「え?」
「グレムリンが……ほら、この前ヤマタノオロチの力を取り込んだファントムが、賢者の石ってのを探してたんだ。覚えてる?」
「はい。鉄を金に変え、生死さえもひっくり返す究極の魔法石、でしたね。それに、聖杯そのものでもあると……」
「……説明文が俺の記憶と一言一句変わらないのはさておき、どうしてもそっちが過ぎるよね。そういえば、教授の研究テーマって命とか生命の神秘だよね」
ハルトは本を本棚の隙間に収納する。傾きがこれ以上大きくならないよう、巨大化の魔法で大きくなった手で本棚を押し戻し、直立させた。
「そう聞いています。蒼井も、研究の内容は見せてもらっていませんが」
「それだったら、賢者の石のことも知らないかな」
「存じ上げていますよ」
突然、深い男性の声がハルトのすぐ背後から響いた。
跳びあがったハルトが振り返ると、教授が仮面を付けたまま、ハルトを見下ろしていた。
「お父さん!」
えりかから飛び降りた結梨が、教授の手に捕まる。
「お仕事おわり?」
「おや、おや。結梨。もう少しだけ時間をください。少し息抜きで席を立ったところで、松菜さんが面白い話をしていたので来た次第です」
教授は少しだけ結梨へ首を傾けた後、その縦線が入った仮面をハルトへ向けた。
その紫の縦線だけが、教授の仮面で唯一黒ではない部位だった。だが、それをどう強く見たところで、彼の内面は何も伺い知ることが出来ない。
「賢者の石。かの高名な錬金術師、アレイスター・クロウリーのみが錬成できたと言われる、伝説の触媒。鉄を金に、溶かして飲めば不老不死にと言われる、まさに夢のような結晶体。しかし後年、数多くの研究者がそれを求めて研究しますが、成功した例はないと聞きます。君も、それを求めるのですか?」
「いいえ。最近、戦いの中でその話を聞いたのと、本の題名を見て繋がってしまって」
ハルトはそう言いながら、手にした本を教授に手渡す。
教授は本を見下ろし、数秒で頷いた。
「おや、おや。若い者は、興味があるものについては突き詰めるべきでしょう。ああ、賢者の石に関する資料もありま
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