第百五十一話 お気に召すままその四
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「実は中身がないとかだと」
「読んでも意味ないわね」
「だからね」
「そんなの読だり観たりするより」
「わかりやすいのをそうするべきね」
「そういうことだね、簡単単純はね」
そうしたものはというと。
「レベルが低いんじゃないよ」
「簡単にわかったらその程度って思うわよね」
「すぐにわかったってね」
「それでいいってね」
「けれど難しくてね」
「中々わからなかったら」
「凄いってね」
その様にというのだ。
「思うけれど」
「実はね」
「それは違うわね」
「簡単でも難しくても」
それでもというのだ。
「真理とか真実とかはね」
「わかるものよね」
「それで真理とかはね」
そう言うべきものはというのだ。
「実は単純明快でね」
「わかりやすいのね」
「何でもね」
伊東はこうも言った。
「太宰治の作品がどうしていいか」
「走れメロスとかの」
「あの人の文章は読みやすくて」
そうであってというのだ。
「言いたいこともね」
「わかりやすいのね」
「太宰って饒舌だからね」
作中ではというのだ。
「色々喋るから」
「わかりやすいのね」
「文章も読みやすいし」
「尚更なのね」
「しかも誤魔化したり抽象的に言わないから」
「ありのまま言うから」
「それでね」
これは太宰が死ぬまでのことだ、お伽草紙でも如是我聞でも読みやすいしその主張は実にわかりやすい。
「あの人は真理を言っているとね」
「言えるのね」
「本当に変な哲学書か思想書で」
そうしたものでというのだ。
「何を言ってるのかわからない」
「そうしたものは何でもないのね」
「一言で済むことを」
そうしたものをというのだ。
「本当に小難しい言葉、文章の羅列で」
「難しい、勿体ぶった」
「何か物凄いことみたいにね」
「言ってるだけね」
「一言で言うとそれは違うだろうっていう」
そうしたというのだ。
「簡単な言葉をね」
「矢鱈難しく言ってるのね」
「そうしたものでね」
「中身はないのね」
「文章は長くて理解するのに時間はかかっても」
「そうしたものね」
「そんな文章とか作品読むより」
それこそというのだ。
「わかりやすいものをね」
「読む方がいいわね」
「それで僕言われたんだ」
伊東は留奈に顔を向けて話した。
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