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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第百一話 齟齬
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宇宙?796年7月7日19:00
ジャムジード宙域、ジャムジード星系中心部、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍、第十三艦隊旗艦トリグラフ、
ダスティ・アッテンボロー

 「出迎えご苦労だね、ウィンチェスター君」

“無事のご帰還何よりです、国防委員長”

俺の目の前では、ウィンチェスターとトリューニヒトの通信が行われている。ウチの艦隊と帰還兵を載せた輸送船団はこの後一度ジャムジードに立ち寄って補給と休息を取った後、ハイネセンに向かう事になっている。そのジャムジードでは俺達と入れ代わりに出撃していく各艦隊が先に到着していて、帰還兵の出迎えの為の式典が行われる事になっていた。

“しかし、ジャムジードで出迎えの式典ですか。通常、こういう行事はハイネセンで行うのではないですか?”

「帰還兵の休息と彼等のハイネセン帰還の支度を整える為だよ。捕虜生活から一転、長期の航海、彼等だって疲れきっている。一度船を降りて休息して、心身共にリフレッシュしてもらう」

“なるほど、表向きの理由はそうですか”

「相変わらず嫌な言い方をするね君は」

 トリューニヒトは肩をすくめた。表向き…そうか、選挙対策の為か。ジャムジードで帰還兵のパレードを行う事によって自分の功績のアピールをするつもりなのか。勿論帰還兵の休息という目的もあるだろうが、メインはアピールの方だろう。おまけにジャムジードには帰還兵の使う金が落ちる。ジャムジードとしては願ったり叶ったりだろう…あれ?ウィンチェスターの奴、この事知っていたんじゃないのか?じゃなきゃジャムジードに寄港するという行動自体が不可解だ。アムリッツァでは大規模な戦闘が始まっているというのに…。通信が切れると、トリューニヒトは俺の方に向き直った。
「君もそう思うかね?表向きの理由だと」
「いえ…」
「表も裏もない。帰還兵の事を考えて、というのも本当だし、ウィンチェスター君が言う裏…選挙対策という事も本当だよ。彼は含みのある言い方をするがね」
「…ですが、アムリッツァでは戦闘が始まっています。悠長にパレードを実施している場合ではないと思いますが」
「聞いている。何でも十五万隻を越える大軍であると」
「ヤン司令官が頑張っていますが今のままでは…」
「…ビュコック長官やウィンチェスター君がそう言ったのかね?」
俺がトリューニヒトに対して軍の状況を陳情するのもおかしな話だが、現状では仕方がない。ヤン先輩がアムリッツァに派遣されたのも、ウィンチェスターが現状を知りながら増援等の手を打たないのも、作戦の一環だからだ。
「いえ、特には」
「では君が私に陳情を行うのは越権行為というものだよ、アッテンボロー提督。気持ちは分かるがね」


7月8日12:00
ジャムジード星系、ジャムジード、ジャムジード宇宙港同
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