第百一話 齟齬
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、第八艦隊旗艦クリシュナ、
アップルトン
「あいつ等にも我々が見えているだろうに。何を考えているんだ帝国軍は」
参謀長にも聞こえる様に独り言を言ってみたものの、参謀長は何の反応も示さない。こいつも何を考えているのか…。
「参謀長、どう思う」
「はあ、どう見ても誘ってますな。こちらが発砲を控えているのをいい事に、有効射程内であっても発砲してこないのがその証拠です。誘いに乗るのは愚の骨頂というものでしょう」
…そんな事は分かっている!何の為の誘引行動だと聞いているのだ、既に一週間もこの状況なのだぞ!
「第七艦隊のマリネスク提督に連絡を」
「了解です」
“何でしょう?”
「マリネスク提督、帝国軍の動きをどう思われる?」
“あからさまな誘引行動ですな。我々が前進しても無駄でしょう”
「敵は後退する、と?」
“左様です。何しろ敵には大規模な増援が存在する。後退を繰り返して我々を敵中深く引きずり込んで我々を一気に殲滅する腹でしょう。それに敵には元から配備されている残りの三個艦隊がまだ姿を現してはいません。其奴等の動向も掴めておらんのに、前進は不味いでしょう”
「ふむ…では、方面司令官に意見具申をしようと思うのだが」
“どういった内容です?”
「前線に来ていただきたいと。此方に来て敵状を見ていただきたい、直接指揮を執っていただきたいと」
“なんとも大雑把な内容ですな”
「今の状況では大雑把な事しか言えんだろう。敵が有効射程内にいるのに攻撃も出来んのだ、攻撃も出来ず現状のまま対峙を続けるのでは味方の士気に関わると」
“…確かにそれはありますが…分かりました、連名で意見具申しましょう”
「忝ない。では私の方から送っておく」
こういう時は上級司令部に投げるのが一番だ…。
08:40
アムリッツァ星系カイタル、自由惑星同盟軍、アムリッツァ方面軍司令部、
ヤン・ウェンリー
「なんとも大雑把な内容だね」
「それだけ困っているという事でしょう。司令官、小官も前線からの意見具申に賛同します。動いてみない事には何も分かりませんし、状況は悪くなる一方です」
司令部の皆の視線が私に注がれる…ラップの言う通りなんだ、現状は。ボーデン、フォルゲン共に前線は私の指示を忠実に守ってくれている…監視以外何もするな…無闇に戦闘を拡大しない為だが、直に敵と対峙している味方にとっては辛いのだろう。ヴィーレンシュタインに十万隻、まだ動向の掴めないミューゼル軍の三個艦隊…何かしようと思っても出来るもんじゃないんだが…。
「概略図を」
指示と同時にグリーンヒル大尉が概略図を映し出した…ボーデンには敵の二個艦隊、フォルゲンは敵の一個艦隊…味方はボーデン方面に第十一、十二艦隊、フォルゲン
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