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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第百一話 齟齬
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だ、と…本当に懲罰など行ってしまえば、辺境は叛乱軍に加担しかねませんから」
「だが、ヘルクスハイマー艦隊は調査と称してボーデンまで進出しているぞ」
「あれは真実、有人惑星の調査の為です。間違って有人惑星に攻撃しないようにと。そのうちフォルゲンにも同じ様に艦隊が派遣される筈です」
逆だったのか…有人惑星を攻撃する為に調査するのだと思っていた。大貴族もそれほど馬鹿ばかりではないという事か。
「という事は、軍が後顧の憂いなく戦えるように…という有志連合軍の主張は正しかったという訳か。てっきり辺境領主を追い出して自分達の勢力伸長の為に行動しているのだと思っていた。何故もっと素直に行動しないのだ、貴族というのは」
俺の言葉にフェルナーは薄く笑った。
「勢力伸長…それは示威が上手く行けば、と話です…貴族達は怯えているのですよ。それを悟られない為に威勢を張り自らを強大に見せている。だから自然と持って回った言動や行動になるのです」
「見栄っぱり…という事ですか」
「そうです、キルヒアイス参謀長。彼等は今更ながらに気付いたのです、自分達の見栄が叛乱軍には通用しない事に。だからヴィーレンシュタインから動く事を避けている。叛乱軍と戦闘になるのを避けているのです」
大貴族の権勢は帝国内でこそ尊重されるものだ。確かに大貴族だからといって叛乱軍が恐れをなす理由はない。それどころか嬉々として有志連合軍を屠りにかかるだろう。
「張子の虎であるからこそ意味を成す、という訳か」
「はい。おそらくブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム侯は有志連合軍が集結した時点でその事に気付いたのだと思います。辺境に懲罰を…意気込みは理解できますが、その辺境は叛乱軍の庭なのです。絵に描いた餅と言わざるを得ません。しかも閣下を意のままに操る為のグリューネワルト伯爵夫人は、ミュッケンベルガー司令長官がフェザーンへ伴っています。これでは公も閣下に無理に戦えとは言えません」
姉上の事が出たので済まないとでも思ったのだろう、フェルナーは頭を下げた。
「ならば私は有志連合軍をさも大規模な増援かの様に扱えばよい、という事だな」
「はい」
「キルヒアイス、各艦隊の出撃準備は」
「既に整っております」
「よし。ロイエンタールに連絡、卿の艦隊はアムリッツァ方面、ボーデン外縁部に向かいアムリッツァの叛乱軍の動静を監視せよ。ヘルクスハイマー艦隊には自由に行動させてよい、その代わり戦闘には参加させるなと伝えさせろ」
「はっ」
「フォルゲンのミッターマイヤー艦隊に連絡、卿の裁量で自由に行動しろと伝えよ。アムリッツァの叛乱軍に見える様に殊更に隙を作れと」
「はっ」
「ケスラー、メックリンガーに連絡、全艦出撃だ」


7月18日08:00
アムリッツァ宙域外縁(フォルゲン方向)、自由惑星同盟軍
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