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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第百一話 齟齬
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ろうが。我々は帝国の統治の一翼を担う為にここまで来たのだ。であればお互いにどちらが主でどちらが従が、自ずと理解出来る筈だが」
「小官は宇宙艦隊司令長官より最善と思われる行動を取れと特命を受けております。これを実現する為に閣下とこうして談判に及んでおります…軍に協力する事も帝国の統治の一翼を担うとは思われませぬか」
目の前でワイングラスを揺らしているのはブラウンシュヴァイク公だった。傍に控えるフレーゲルが俺を蔑む様な目で見ている。そのフレーゲルが口を開いた。
「卿の軍団独力では叛乱軍を撃攘出来ぬというのか。副司令長官が聞いて呆れるな…そうではありませんか、叔父上」
以前の様に俺を金髪の嬬子呼ばわりする事はなくなったが、フレーゲルの発する言葉には禍々しい毒が籠っているのを感じる。
「…フレーゲルの申す通りだ。戦いもせぬうちに我々に援けを乞うのでは帝国軍の鼎の軽重が問われるのではないかな、副司令長官」
「…戦いは軍人だけでやればよい、と」
「そうは申してはおらん。まずは卿等の力を叛徒共に見せつけるべきであろう、と言っておるのだ」
「叔父上がこう申されているのだ、まずは叔父上の助言に従ってはどうかな、ミューゼル殿」
屈辱だった。期待はしてはいなかったが、ブラウンシュヴァイク公とてここまで軍を率いて来たのだ、幾ばくかの協力の姿勢は見られるものと思っていた。そもそも有志連合軍の目的には軍に協力する事も含まれていたのではなかったか。
「分かりました。閣下のご助言に従いしばし愚考してみようと思います。状況次第では援兵を求める事になるやもしれませんが、その際は何卒…」
「うむ」

 応接室を出ると、部屋の中からフレーゲルの哄笑が聞こえてきた。フレーゲルはともかく、ブラウンシュヴァイク公の態度は不可解なものだった。自ら軍を率いてくるくらいなのだから、もっと対抗意識むき出しだろうと思ったのだが…。
「公との談判、どうでしたか」
司令部庁舎の外で地上車と共に待機していたキルヒアイスが訊ねてきた。
「どうもこうもない」
俺達二人が乗り込んだのを確認して、フェルナーがドアを閉めて運転席に乗り込む。
「フェルナー、卿は公から何か聞いていないか」
「小官は閣下の部下ですが」
「…自分の部下と腹の探り合いなど面倒だ。そうは思わないか、キルヒアイス」
「そうですね」
そうですねと言うキルヒアイスの言葉をヘッドレスト越しに笑いながら、フェルナーが諦めた様に口を開いた。
「公は戦いたくないのです」
「戦いたくないだと?」
「はい。どうやらリッテンハイム侯も同じ考えの様です」
「では辺境領主達への懲罰云々というのは…」
「はい。示威…ブラフだという事です。口だけでは辺境領主達も考えを改める事はないだろう、だからこそ大規模な軍勢を動かす必要があるの
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