第百一話 齟齬
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故だと思います?」
「国内の政変に備えているから…じゃないのか。お前さんがそう言っていたとヤン先輩に聞いた事がある。皇帝の死に備えているのだと」
「はい。オーディンに十個艦隊を残し、五個艦隊で我々の攻勢に備える…辺境の兵力が遅滞防御用だと考えれば、五個艦隊というのは納得出来る数字です。辺境の兵力を率いるミューゼル大将は戦略的には遅滞防御でも、戦術的には攻勢防御を採るでしょう。五個艦隊というのはそれが充分に可能な兵力ですし、彼の性格的にも攻勢防御を好む筈ですから。厄介な相手です」
「だが現実には十万隻の増援だ。これは帝国が、国内の政変に備える必要がなくなったと考えるべきじゃないのか」
「では何故ミュッケンベルガーが捕虜交換に訪れたのでしょう?奴は宇宙艦隊を率いる男です。先年の戦いでも奴は自ら軍を率いてやって来た。そんな男がフェザーンに来た。何故です?帝国軍の目的がアムリッツァ奪還ならば、奴がその作戦から外れる訳がありません」
「それはそうかも知れないが…お前さんの想像に過ぎないんじゃないのか」
「まあ続きを聞いて下さい。仮に政変を心配する必要が無くなって十万隻の増援他でが現れたとします。では何故ミューゼルはその増援を使わないのでしょう?私の知るミューゼルという男はそんな悠長な男ではありません。十万隻の加勢があれば堂々と攻めてくるでしょう」
「しかしな…」
「ではミュッケンベルガーがフェザーンを離れた今はどうでしょう?奴は捕虜交換を終え、何の憂いもなくミューゼルに戦えと命令を下す事が出来る。しかし現状はそうではない。戦闘自体は先手を取った方が有利です。ミューゼル麾下の五個艦隊だけでもボーデンとフォルゲンに進出して有利な体勢を作りあげる事が可能です。ミューゼルの性格からすればそれくらいはやるでしょう、ですがその体勢すら構築していないとすれば、帝国軍の目的はアムリッツァ侵攻ではない」
アッテンさんは頭を掻いた。
「じゃあ、帝国軍の目的は一体何なんだ」
「分かりません」
アッテンさんは呆れた顔をした…だって分からないんだもの…。
「分からないって、お前な…」
「分かりませんが、アムリッツァ奪還を目的としたものではないと思います。我々が捕虜交換を持ちかけておきながら再出兵を宣言した様に、帝国だって捕虜交換の裏で何か考えていてもおかしくはない。ただ、アムリッツァを狙うのなら時期を逸したという事です。彼等が狙うなら捕虜交換終了と同時にやるべきだった」
「確かにそうだが…」
俺の言っている事は確度の高い推論だと思うんだけどなあ…でも、推論に過ぎないのは確かだ。だからこそアッテンさんも不安なのだろう。
「…分かりました。作戦予定を繰り上げましょう。パレードが終わった後は欺瞞の為の訓練を開始する予定でしたから、それを端折ってしまえば予定を繰
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