第百一話 齟齬
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盟軍管制区、
ヤマト・ウィンチェスター
帰還パレードで行進を行う帰還兵代表の隊列が宇宙港を出て行く。隊列はチヒル・ミナール市市街地までは車両で移動、それから行進するんだけど、宇宙港自体が市と隣接しているから、移動距離はそれほどでもない。中央区のメインストリートには既にトリューニヒトと各艦隊司令官が受閲の体制を整えて待機している。俺もこれから中央区に向けて移動するんだけど、本当は先に向かっていなければならない筈のアッテンさんが俺を待っている…。
「何か言いたい事がありそうですね、アッテンボロー先輩」
「分かってるだろう?」
俺を待つ地上車に滑り込む様に乗り込むと、アッテンさんはそう言った。アムリッツァの件だろう、昨日トリューニヒトから聞かされた、アッテンさんがすごく心配しているって…。
「ヤンさんへの増援ですか?」
「ああ。半分…いやせめて二個艦隊は増援に出さないと先輩だって辛いと思うんだが」
「ヤンさんがそう仰ったのですか?」
「いや、そうではないんだが…」
「では増援はありません。同じ様な事を国防委員長にも言われませんでしたか?」
アッテンさんの口調が先輩と後輩だった頃に戻っているのに気が付いた。よほどヤンさんの事が心配なのだろう。
「お前さんは心配じゃないのか?帝国軍は十万隻もの増援を繰り出しているんだぞ?」
「それですよ」
「…どういう意味だ?」
「そんな大規模な増援が有りながら攻めて来ないのはなぜでしょう?十万隻といえば、六個から七個艦隊ですよね。元々帝国軍は辺境に五個艦隊を配置している。合わせれば十一から十二個艦隊だ。これはアムリッツァの味方を殲滅するのに充分な数です」
「だからこそだ、増援を…」
言いながらアッテンさんは何かに気付いた様だ。そこで言葉を止めた。
「何か…攻勢に出られない理由があるのか?帝国軍に」
「はい。帝国軍がその気なら、とっくにアムリッツァは奪われていると思います。それをなぜ行わないのか」
「ヴィーレンシュタインの根拠地の完成を待っている…いや、違うな。教えてくれよウィンチェスター」
「単純ですよ。彼等はそれを命じられていないんです。それしか考えられない」
アッテンさんはポカンとしている。少し考えれば分かる事なんだけど、単純過ぎて理解に苦しむのかも知れない。
「そんな事って…有り得るのか」
「ええ。帝国軍の辺境への戦力配置ですが、当初は五個艦隊でした。少ないとは思いませんか?此方の…アムリッツァの味方は常に少なくとも五個艦隊は駐留しています。常識的に考えれば此方より多くなければ抑止力足り得ません。まあ、我々に攻勢に出る意思が無い事を悟っての五個艦隊なのかもしれませんが…それはさておき、これは帝国が辺境に回せる兵力が短期的には五個艦隊しかない事を意味しています。何
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