第三部 1979年
戦争の陰翳
柵 その5
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ある九條家の屋敷だった。
ハイネマンは、穂積に睡眠薬入りの酒を飲まされ、そこにある地下室に連れてこまれた。
気が付くと、ソ連赤軍の軍服を着た一団に囲まれていた。
ソ連兵は何を考えているのか。
剣呑な表情で、AKM突撃銃の銃口を向けてきた。
下手な事をすれば、自分の命は危ない。
そう考えたハイネマンは、ソ連軍の将校に訊ねた。
「要件を聞こう」
ソ連軍将校は両手を腰に置くと、不敵の笑みを浮かべた。
コンクリートが打ちっぱなしの室内を、軍靴を踏み鳴らしながら歩く。
「簡単な事。
F‐14に使われた新兵器、フェニックスミサイルの技術を、BETAで苦しむソ連に提供してほしい」
「バカな事を!そんな事をすれば……」
「あなた方は、GRUの連絡員に設計図面を渡せばいいだけです。
後の始末は私たちが……」
「無茶だ!断る」
「死にますよ。
ご友人の篁とその一家が……」
ソ連軍将校は、懐中からパーラメントのキングサイズを取ると、1本抜き出す。
煙草に火をつけ、吸いこんだ後、紫煙と共に口を開いた。
「GRUを、舐めんでほしい。
貴方の大事なご友人の傍には、GRUの潜入スパイがすでにいるのです。
電話一本で消せるのですよ……」
将校が黒電話の受話器を取ろうとしたとき、ハイネマンは飛び掛かった。
「止めろ!貴様ッ!」
将校は素早い動きでハイネマンを羽交い絞めにすると、その頬に平手打ちをくらわした。
「わ、私がF‐14のファイルを渡せば……
た、篁は、ミラは無事なんだろうな……」
GRUの将校は、大げさに肩をすくめた。
「それはあなたの出方次第」
四方より銃口を突き付けられたハイネマンは、押し黙るしかなかった。
天才技術者の無様な姿を見て、GRU将校は悪魔の哄笑を浮かべた。
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