第三部 1979年
戦争の陰翳
柵 その5
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要であるという結論が出た。
しかし、開発に成功したF−16は、米政府の方針で輸出が禁止されていた。
「その後、ジェネラル・ダイナミクスが問い合わせたら、最新鋭機の場合はダメだという答えを貰ったの」
「じゃあ、東ドイツがF−16を購入することは無理だと……」
「外装やエンジン性能を落とした廉価版なら、国務省が許可するって話が出たの。
モンキーモデルって、言えばわかるかしら」
軍事用語に、「モンキーモデル」という言葉がある。
これは、生産される兵器に対して、意図的に性能を落とした派生モデルのことを指す言葉である。
一般的に使うようになったのは、1978年に英国に亡命したGRU(赤軍参謀本部情報総局)将校ヴィクトル・スヴォーロフの著書で用いられたのが嚆矢である。
スヴォーロフの著書により、諜報の世界から一般に知られ、主にソ連製の兵器に用いられた。
「正規モデルの輸出許可は出るでしょうが、いずれにせよ、時間はかかるわ。
それまではモンキーモデルで頑張ってもらうしかないわね」
軍事におけるモンキーモデルは、実は日本も無関係ではない。
日本政府は、第一次世界大戦前に、英国ヴィッカーズ社に金剛型戦艦を2隻発注した。
(1828年から1999年までヴィッカーズ。1999年から2005年までBAE システムズ。2005年以降はBAE システムズ・ランド・アンド・アーマメンツ)
その際、「金剛」と姉妹艦の「比叡」の製造方法が異なるという事態があった。
金剛は英国の工廠で、基準的にも優れた品質の鉄で作られた。
しかし比叡は、英国のデータを元に日本国内で建造された軍艦だった。
その為、船体に使われている鋼鉄の質が、従来の英国製に比して劣り、日本製の劣悪な工具で改造できるほどだった。
篁亭を後にしたフランク・ハイネマンはあてもなく京都市街をさまよっていた。
篁とミラが結婚したという話は知っていたが、すでにその間に子供がいた……
予想もしない事実にハイネマンの衝撃は大きかった。
本当にミラは、篁の妻になってしまったのだな。
結婚すればいずれは子供ができるという予想はしていたものの、その事実はやはりショックだった。
その時である。
ハイネマンの目の前に、車が止まる音がした。
彼は思考を打ち切って、近くにあるシトロエン・CXの方を見る。
運転席は暗くて見えないが、日本人の様だった。
「こんばんわ、ハイネマン博士」
開いた後部座席から声をかけてきたのは、穂積という男だった。
ハイネマンの認識では、彼の来日費用を立て替えてくれたビジネスマンだった。
「お見かけしたもので……
急ですが、私の家まで来ませんか」
ハイネマンは穂積を信用して、男の館に向かうことにした。
男が向かったのは、五摂家の一つで
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