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冥王来訪
第三部 1979年
戦争の陰翳
柵 その4
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疑問に答えた。
「面白いことをいう子ね」
 ミラは、あいまいな笑みを浮かべながら続ける。
「私が単純にタダマサと一緒になったのは、自分の将来を考えての事よ」
 それに対してアイリスディーナは何も言わず、真剣に聞き入っている様子だった。
 
 マサキは、その話を聞いて、ふと前の世界の事を思い出していた。
婦人解放運動で、本当に女性は幸せになったのであろうかと。 
 女性が充実したキャリアを持つには、高校は無論のこと、大学や大学院に進む必要がある。
大学を出た後、企業や公的機関に就職し、そこから結婚をして、子供を設ける。
 それが日米を代表とするG7諸国の一般的なキャリアウーマンの道だ。
ただそれを行うとどんなに早くても、女性は24歳以上になってしまう。
 就職して2,3年すれば、27、8歳だ。
そうすると今度は子供を持つのが必然的に遅くなる。
 前の世界では30歳前後の出産が一般化したせいで、高齢出産の年齢が5歳引き上げられたほどであった。
30歳前後でも健康な子供は生めなくはないが、生める子供の数は限られてくる。 
 仮に就職から結婚の期間が短くても、育児資金をためるために妊娠の時期を遅らせることが考えられる。
そうすると、今度は子供より親の介護や自分自身の老後を考えるしかなくなってくる。
 必然的に子供を持つ数が減ってくるという負のスパイラルに入ってくる。
先進国の宿痾(しゅくあ)ともいうべき問題だ。

 アイリスディーナがその辺に疎いのは、ソ連東欧圏という早婚の文化の中に育ったためであった。
ロシア人などは、婚姻可能な18歳前後で結婚し、若いうちに子供を産んでおく文化が一般的だ。
ただ近年は社会の変化で少子化の傾向も出てきており、第一子と第二子の年齢が10歳ほど離れているのが一般的である。
 そしてある程度の年齢になると結婚していないのを以上ととらえる習慣も大きいだろう。
その為、20歳前後で結婚し、二人ほど子供を持った後、離婚するのザラだった。
 ソ連や東欧の結婚制度では、余計な裁判や手続きなしに簡単に離婚できたためであった。
そして婦人の社会進出が進んでいたので、現金収入の手段が西側より多かったのもあろう。
 ただしソ連の場合は、都市部の話であって、僻地や寒村では19世紀の様な状態が続いているとも聞く。 

 マサキは、篁とミラの結婚年齢の事は気にならなかった。
30歳の夫と27歳の妻というのは、平均的な日本人の婚姻年齢であり、また米国人の婚姻年齢であったからだ。
 ただそれは2020年代の感覚である。
1970年代では、アメリカ人男性の平均結婚年齢は24歳、女性は22歳が一般的だった。
篁はともかくとして、ミラが婚姻年齢を気にしていたのはそういう事情があったのだ。
 また東独では
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