第三章
[8]前話
「お祖父ちゃんもね」
「おられるね」
「もう九十だけれど」
それでもというのだ。
「まだ元気だし」
「会うのが楽しみだね」
「そうよ」
愛奈は夫に心からの笑顔で答えた。
「あの駅に行くだけでね」
「天下茶屋の」
「そう、あの駅はずっとね」
三十になっているその顔で話す、子供の頃のままの童顔で背は一四七程だ。髪の毛は今では長く胸も大きくなっている。
「子供の頃から馴染みがあるね」
「お祖父ちゃんが戦争に行った駅だしね」
「古いね」
「前の世紀の話だけれど」
それでもというのだ。
「そうだったし」
「その頃からあって」
それでというのだ。
「お祖父ちゃんも戦争にいってお仕事にね」
「行ってたんだね」
「そしてね」
そうしてというのだ。
「お父さんとお母さんもね」
「君もだね」
「そうだったわ、学校に行って」
夫に笑顔で話した。
「遊びにも行って」
「そうしてだね」
「今はね」
「実家に帰る時に使うね」
「そうなの、あの駅は私にとっては」
「思い出の場所の一つだね」
「人生のね、駅ってね」
まさにというのだ。
「そうした場所よね」
「行く時に使う」
「そうしたね」
まさにというのだ。
「場所よね」
「そうだね、戦争にも行って」
「お仕事にも学校にもね」
「遊びにもね」
「行くね」
「そうした場所ね、そして」
「実家にも帰る場所だね」
夫は自分からこの言葉を出した。
「そうだね」
「ええ、じゃあその駅にね」
「今から行こう」
「皆でね、駅に行くだけで」
人生の思い出が多くあるその場所にというのだ。
「もうね」
「幸せな気持ちになるね」
「そうなの、それじゃあ」
「今から行こう」
「家族でね」
笑顔で話してだった、そうして。
一家で実際に駅に行った、愛奈はその駅から実家に帰った。駅を出た時彼女は思わず振り返って駅とその名前を見た、すると自然に微笑んだ。そのうえで実家に帰り。
祖父の仏壇に手を合わせた、それから一言只今と言った。あの駅から帰ってきたとも。
駅 完
2024・7・11
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