第四章
[8]前話
「冒険者の仕事は一人じゃ無理なんだぞ」
「そうなの?」
「ああ、ギルドがあってな」
小学三年生の彼に話した。
「そこの便りを受けてな」
「そうしてなんだ」
「仲間、友達が大勢いてな」
共に仕事をする彼等のことも話した。
「そしてな」
「やっていけるんだ」
「一人で気楽で出来るか」
そうした考えはというと。
「最初はそう思っていてもな」
「違うんだ」
「そうだ、人と人のつながりでな」
それでというのだ。
「やるんだ」
「そうしたものなんだ」
「ああ、そしてな」
甥にさらに話した。
「色々な仕事があるんだ」
「モンスターやっつけるだけじゃないんだ」
「そっちは案外少ないか」
冒険者になった当初よくやり今も結構受けている肉体労働の仕事の話をした、誘導や警護もそこに入っている。
「むしろな」
「そうなんだ」
「ああ、それで家だってな」
当初は風来坊で生きようと考えていてもだ。
「この前買ったしな」
「叔父さんお家建てたんだ」
「ああ、結婚するからな」
だからだというのだ。
「これからはギルドの職業訓練所で働く」
「冒険者止めるの?」
「やりながらだよ、つてが出来てな」
冒険者の仕事をしているうちにだ。
「訓練所にも知り合いが多く出来てな」
「訓練所でもなんだ」
「働いてな」
そうして安定した収入を得てというのだ。
「それでな」
「やってくんだ」
「ああ、本当に冒険者はな」
この仕事はというのだ。
「人と人の付き合いだ」
「一人じゃないんだね」
「一匹狼だとな」
「僕達狼人だけれど」
「それでもな」
「一人じゃ出来ないんだね」
「絶対にな」
それこそというのだ。
「出来ないんだ」
「そうなんだね」
「そう思ってもやってると自然に一人じゃなくなるんだ」
「そうしたお仕事なんだ」
「他の仕事もそうかも知れないけれどな」
それでもというのだ。
「冒険者はそうだ」
「そうなんだね」
「そのことわかってくれよ」
実家で甥の博樹に話した、そしてだった。
両親と兄夫婦に結婚する相手を紹介した、彼は一人ではなかった。今はそのことを誰よりも実感していた。冒険者であっても。
やがて冒険者を引退して訓練所の仕事に専念する様になったがその時にも言った、冒険者は一人で出来るものではないと。そう言うのだった。
ロンリーウルフ 完
2024・7・11
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