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メイドと時計と推理 
第一章

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 来客が遅れていた、それでだ。
 バスカビル家の当主トーマス=バスカビル子爵は心配していた、それで言うのだった。
「大丈夫かな」
「お客人ですね」
「うん、遅れているけれど」
 子爵は傍に立っている若い銀髪をボブにしているライトブルーの目のメイドであるキャサリン=グロウスに述べた。子爵は長身で引き締まった身体でダークブラウンの髪をオールバックにしている。面長で黒い目で端正な顔立ちで燕尾服を着ている。四〇代で妻との間に男の子が二人いる。イギリスではそれなりに有名な企業を代々経営している。
「どうなのかな」
「そうですね」
 ここでだ、グロウスは。
 自分の左手の腕時計を見てだ、子爵に答えた。
「あと少しでかと」
「来られるんだ」
「間違いなく」
「どうしてそう言えるのかな」
「お客人は鬼頭朱里様ですね」
「そう、日本のビジネス相手だよ」
 子爵はその通りだと答えた。
「若いが誠実で真面目でしかも経営手腕のある」
「出来た方ですね」
「嘘を言わず約束を守る」
「そうした方ですね」
「だから遅れる筈がないけれど」
「あと少しで、です」
 グロウスは子爵の傍にマネキンの様に立ったまま述べた。
「来られます」
「そうなんだね」
「ですが急いで来られるので」 
 それでとだ、グロウスはさらに言った。
「焦っておられるので落ち着いて頂く為に」
「その為にというと」
「紅茶を用意しておきましょう」
「来てすぐに飲んでもらうんだね」
「そうしてもらう為に」
「お茶をだね」
「これから用意します」
 こう言ってだった。
 グラオスはお茶の用意をした、それが整うとだった。
 やや丸顔で黒髪をロングにして黒く細い奇麗なカーブを描いた眉と大きなきらきらした目と赤い整った唇と白い肌に高めの鼻を持つ一五五位の背のスタイルのいい膝までのダークグレーの膝までのタイトスカートとスーツのアジア系の女性がタクシーで子爵の屋敷に来てだ、そのうえで子爵の前に飛んで来てまずは頭を下げた。
「遅れて申し訳ありません」
「いやいや、まずはお茶でも飲んで」
「そうしてですか」
「お話しましょう」
「そう言って頂けますか」
「まずは落ち着いて」
 そっとグロウスに彼女が来る前に耳打ちされた言葉を言った。
「お茶を飲んで」
「そうしてですか」
「そのうえで、です」
「ビジネスのお話をですね」
「しましょう」
 子爵は会社を経営していたその責任者として応えた。
「これから」
「はい、それでは」
「今から」
 こう話してだった。
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