第一章
[2]次話
ナックル
去年までは押しも押されぬストッパーだった、だが。
今年に入り球速も球威も落ちてだ、西村純は中継ぎになった。ストッパーは別の者が担うことになった。
「西村も速球が駄目になるとな」
「それが武器だったからな」
「中継ぎでもちょっと心配だしな」
「もうストッパーは無理だな」
「これまで頑張ってくれたが」
「限界も近いかもな」
「まだ三十だけれどな」
ファン達はこうした話をして西村自身その話を聞いていた。背は一八五でトレーニングにより引き締まったピッチャーらしい体格している。四角い顔に尖った感じの口で目は細い。黒髪は短くしている。
彼はその言葉を聞いて何とかその状況から脱却しようとトレーニングに励んでいた、食事も考えて摂っていたが。
「やっぱり歳か」
「球速戻らないのね」
「球威もな」
妻の冴子に答えた、黒髪を整えたボブにしていてはっきりした切れ長の目と赤い唇を持つ卵型の顔をしている。背は一六五位でスタイルはかなりいい。
「戻らないな、その二つでな」
「これまで抑えてきたわね」
「あとスライダーとシュートでな」
左右の揺さぶりも使ってというのだ。
「コントロールも自信あるしな」
「今は左右とコントロールね」
「それで中継ぎでやっていったよ、今シーズンは」
十月になって言うのだった。
「けれど俺はやっぱりな」
「ストッパーよね」
「入団した頃からやってきたしな」
ストッパーの仕事をというのだ。
「セーブ王に何度もなってな」
「シリーズでも投げたし」
「やっぱり俺はな」
「ストッパーでいたいわね」
「ああ、けれど肝心の球速と球威が落ちてな」
そうなりというのだ。
「左右の揺さぶりとコントロールだけだとな」
「限度があるのね」
「中継ぎでもまずい時あったしな」
今シーズンはというのだ。
「どうしたものかな」
「ここは思い切ったことする?」
ここで妻は自宅で難しい顔で語る夫に提案した。
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