第二章
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「そうもいかないんだ」
「あるよ、やっぱりね」
「お家のことはね」
二人の義兄の坂本正興と高橋秀治も言ってきた、二人共温厚な性格がそのまま外見に出ているが正興は太っていて秀治は痩せている。二人共それぞれの妻と一緒に克也が社長をしているその不動産会社で働いている。
「今だってね」
「少なくなっていてもね」
「ましてうちは古いお家で」
「代々の大地主だしね」
「この県に深く根を下ろしていて」
「政治家でもあるから」
「そうした家ならですね」
克也は義兄達の言葉も受けて言った。
「やっぱり何かと」
「あるよ、跡継ぎとかのことも」
「それで長男さんならだよ」
「幾ら上にお姉さんがいてもね」
「二人でもね」
「長男さんは長南さんだからね」
「ありますか、しかし僕そんなに出来もよくなくて」
首を少し横に振りつつ言った、わからないといった顔で。
「外見もこうですが」
「けれどあんたまともじゃない」
「普通に大学まで出て働いて」
「おかしな趣味もないし悪いこともしない」
「だからなのよ」
姉達はそれでと言った。
「問題なしってなるのよ」
「お家を継いでもね」
「長男で別に問題ないなら」
「古いお家なら後継ぐのよ」
「そんなものなんだ、お陰で毎日かなり忙しいけれど」
県会議員の仕事に会社の方にというのだ、今は結婚して妻との時間もある。だが趣味は何とか満喫している。
「今もそうしたお家のことはあるんだね」
「ないと思っていてもね」
「やっぱりあるのよ」
姉達は確かな声で告げた。
「本当にね、だからね」
「これからも頑張ってね」
「それでいいわね」
「あんたも結婚したんだし」
「家が続く様に」
姉達の言いたいことを察して言った。
「子供もだね」
「ええ、いいわね」
「これからはね」
「そっちも頑張るよ」
こう言って妻との時間を過ごした、二年後長男が生まれたが彼はその息子を見て妻に対して言った。
「この子が跡継ぎだね」
「はい、ちゃんと育てていきましょう」
「この子がどう思ってもこれといって問題なかったら」
「蜂須賀家を継ぎますね」
「そうなるね、お家のことは続くね」
そうした家があることを彼はこの時もしみじみと思った、そして彼が七十になった時に大学を出て真面目に働いている息子に後を継がせた、そうして蜂須賀家はずっとその県で古く大きな家として続いていった。
タクシーの運転手から 完
2024・6・11
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