小鳥遊
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「ふう……」
息を大きく吐いたウィザードは、銀のベルトを操作する。
すると、全身を包んでいた土の魔力が解放され、生身のハルトの姿に戻った。同時に、ビーストもベルトの扉を閉じ、コウスケへ変身を解いていた。
「何とかなったな」
「うん」
コウスケへ返事を返し、ハルトはフロストノヴァへ向き直る。
デイダラとパピヨンがいなくなった虚空を見つめていた白いウサギは、
「助けてくれてありがとう。フロストノヴァ」
「お前たちを守ったつもりはない」
フロストノヴァの目線が動く。
彼女の視線の先には、コウスケの足元で元気に彼にしがみつくひながいた。彼女はコウスケへ「らいおんさん! もういっかい!」とねだっており、コウスケは困った顔で彼女を宥めようとしていた。
「無事だったようだな」
「ああ。アンタのおかげだな」
コウスケはくしゃくしゃとひなの頭を撫でまわしながら言った。
彼の手が動くごとに、ひなの髪はだんだんとボサボサになっていく。だがそれはひなにとっては嬉しいようで、コウスケの手を掴み、自身の頭から離させないように支えている。
微笑ましいなと思っていると、背後からひなの保護者の声が聞こえてきた。
「ひな!」
「ひなちゃん!」
ハルトが振り返ると、ひなの保護者である二人……祐太と香子が駆けつけてきた。
祐太は即、コウスケと戯れているひなを抱き上げる。
「ひな! 大丈夫か!? よかった、怪我はないか!?」
「おいたん、ぎゅーいたい」
「よかった! よかったあああああああああああああ!」
叫ぶ祐太を見ながら、香子も胸を撫で下ろしている。一瞬だけフロストノヴァを見たような動作の後、彼女はコウスケへ目を移した。
「多田くん、ひなちゃんを守っていてくれたのね。ありがとう」
「あ……ああ! 当然だろ! オレこう見えても紳士だぜ!」
「コウスケ、本当にありがとおおおおおおおおおお!」
滝のような涙を流し、顔を真っ赤にした祐太がコウスケへ叫ぶ。
コウスケが彼を宥めている最中、ハルトは香子が白いウサギへ目線を送っていることに気付く。
「加賀さん、少し下がって」
「え? ええ……」
香子はハルトの指示に大人しく従ってくれた。彼女を背にし、ハルトはフロストノヴァへ向き直る。
「フロストノヴァ……アンタは、戦いを止めるつもりはないの?」
「無い」
フロストノヴァはそう言いながら、ハルトへ背を向ける。
「私にも、救い出したい者たちがいる。私を慕ってくれる者たちがいる。あいつらに報いるためにも、私は負けられない」
「そのために、他の大勢の参加者や、この街の人たちを氷漬けにするの?」
「それはお前も同じだろう」
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