第百四十九話 文化祭の中のデートその十三
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「今もだよ」
「人口が回復していないのね」
「百七十年は経っても」
それでもというのだ。
「そうなんだよ」
「食べものがないとそうなるのよね」
「そうだね」
「そう思うとこうして」
一華は周り、農業科の体育館の中を見回した。様々な試食を大勢の学生や参加者が食べて舌鼓を打っている。
「色々食べられてね」
「俺達幸せだね」
「お腹一杯ね」
「全くだね」
達川はその通りだと頷いた。
「こうしてね」
「そうね、それじゃね」
一華は達川の言葉を受けてこう言った。
「また我儘言っていい?」
「何かな」
「ええ、ジャガイモのお話したから」
ジャガイモ飢饉のそれをというのだ。
「ジャガイモ食べたくなったから」
「だからだね」
「今度はね」
「ジャガイモ食べるんだね」
「そうしない?」
「いいね」
達川は一華の『我儘』に笑顔で応えた。
「今のお話ならね」
「それならね」
「ジャガイモ食べるといいね」
「そうよね」
「ジャガイモが採れなくなって飢饉になって」
「大勢の人が亡くなってね」
「地獄になったから」
だからだというのだ。
「ここはね」
「ジャガイモよね」
「それを食べようね」
「それでジャガイモ料理は何あるかしら」
「ふかし芋だよ」
「それなのね」
「ふかしたジャガイモにね」
まさにそれにというのだ。
「バターを乗せて」
「それで食べるのね」
「そうするんだ」
「そうそう、ジャガイモにバターを乗せたら」
そうすればというのだ。
「美味しいのよね」
「シンプルだけれどね」
「美味しいのよね」
「それでね」
「試食ではそうして食べるのね」
「そうだよ、それじゃあ」
「ええ、今度はね」
達川に笑顔で応えた。
「ふかし芋をね」
「食べようね」
「我儘聞いてくれて有り難うね」
「我儘でもね」
達川は一華にそれでもと返した。
「この我儘はいい我儘だよ」
「我儘って悪いものでしょ」
「何でもいいものと悪いものがあるから」
「それでなの」
「今回はね」
一華が一緒にジャガイモを食べようと言ったそれはというのだ。
「いい我儘だよ」
「そうなるの」
「だって餓えるお話をして」
そうしてというのだ。
「餓えないことの幸せを確かめる」
「そうした我儘だから」
「いいと思うよ、実際あの時アイルランドのジャガイモが採れたら」
ジャガイモの病気がアイルランド中に蔓延せずにだ、尚他の作物は採れたがイングランド人の地主達は収めさせイギリス政府も全く手を打たなかった。
「ああはならなかったし」
「大勢の人が死ななかったから」
「だからね」
それでというのだ。
「本当にね」
「ジャガイモを食べようっていう我儘は
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