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ハッピークローバー
第百四十九話 文化祭の中のデートその十一

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「ないとね」
「駄目だね」
「今は日本でもね」
「オリーブオイルがあるなら」 
 達川はそれならとだ、栗を食べつつ言った。
「それだけで幸せだね」
「そうね」 
 一華も確かにと頷いた。
「些細なことかも知れないけれど」
「けれどね」
 それでもというのだ。
「オリーブオイルがあるなら」
「それだけでね」
「幸せよ」
「全くだね」
「もっと言えばこうしてね」
 一華は達川が出した梨を食べた、小さく切られて白い透明なプラスチックの容器に入っているそれを食べつつ話した。
「色々と食べられるだけで」
「幸せだね」
「食べるものがないとね」
「それだけで不幸だしね」
「そうだね、終戦直後なんてね」
 達川はその頃のことを話した。
「もうね」
「食べるものがなくてね」
「大変だったっていうし」
「よく聞くわね」
「うん、あの頃はね」
「大阪も神戸もね」
「何処も食べものがなくて」
 そうした状況でというのだ。
「物凄く大変だったっていうし」
「それでヤミ市で残飯シチューとか売ってたんだよね」
「すいとんとかね」
「そんな状況で」
 それでというのだ。
「もうね」
「生きるだけでも大変で」
「もっと言えば飢饉の時なんて」
 達川はその頃の話をした。
「教科書にあったけれど」
「天明とか天保の」
「もう土でも食べたっていうね」
「土がゆね」
 土でもと聞いてだ、一華はこう返した。
「それよね」
「そういうのも食べないと」
「餓死していたわね」
「そんな状況で」
「実際に餓死した人多かったね」
「そうみたいね」
 然程多くなかったという説もある。
「天明でもね」
「うん、もう欧州なんてね」
「ジャガイモがはいるまでね」
「今よりずっと食べものがなくて」
「アイルランドの子言ってるわね」
 一華は暗い顔で話した。
「そのジャガイモもなくなって」
「ジャガイモ飢饉だね」 
 達川もこの話は知っていた、十九世紀中頃にアイルランドを襲った史上最悪と言っていい悲劇である。
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