九十一 似て非なるモノ
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を逸らした。
同じく多少申し訳なさそうな面差しでナルを見たオモイは、青年へ視線を向けようとしたが、途中で思い留まると地面を蹴る。
さっさと無遠慮にこの場を立ち去った部下に溜息をつくと、サムイは失礼なふたりに代わって口早に礼を述べた。
何故、彼が『暁』の情報を知っているのか。
何故、八尾の人柱力であるキラービーの人物像を知り得ているのか。
その謎をサムイは直感で、見て見ぬふりをした。
優しそうな雰囲気ではあるが、その佇まいは一切油断のならない忍びのもの。
値踏みするようなサムイの視線に物怖じしないところからも、ただの忍びではなかろう。
けれどこれ以上踏み込むつもりはサムイには毛頭なかった。いや、勇気がなかったのだ。
特に他里であるこの場では厄介事は勘弁願いたい。
だから穏便に済ませようとしてくれる青年の意向を酌んでこの場を早々に立ち去るのが得策だとサムイは感じ取る。
最後に、青年と瓜二つでありながら、どこか茫然自失で立ち竦む少女を一瞥する。
サムイ自身も情報収集していた為、木ノ葉の里で噂されていた人物の名を把握していた。
木ノ葉の里を『暁』のリーダーであるペインから救った英雄。
彼女が木ノ葉の皆が噂していた波風ナルだと察したサムイは、それではこの少女と似ている青年は誰なのだろうと当然の疑問を抱きながらも、それ以上は追究しなかった。
というのも早くこの青年から離れたいのが本音だった。
早く離れないとカルイのように囚われてしまいそうだったから。
抗い難い何かに。
「情報感謝する」
サムイを始め、オモイ・カルイが立ち去った小屋では暫し沈黙が広がっていた。
混乱して何も言えずに立ち竦んでいた波風ナルは、やがて、自分の兄だと名乗った青年が口を開いた途端に、ビクリと肩を跳ね上げる。
その過剰な反応に苦笑しながら、ナルトは当たり障りのない話題を振った。
「お花…」
「え?」
「いや。勝手に見舞いのお花を送って申し訳なかったと思ってね」
かつて、波風ナルとナルトはふたりきりで会ったことがある。
木ノ葉崩しが起きる前。
中忍本試験が開始する前にナルが“口寄せの術”を取得しようと四苦八苦していた際。
ナルトは彼女にさりげなく近づき、助言していた。
中忍試験に参加したライバルだというのに、彼はナルに対して親身に接してくれたし、ナルも彼を悪い人間だとは思えなかった。
それどころか、一緒に一楽のラーメンを食べに行く約束までしていた。
その後、“口寄せの術”を見事取得し、チャクラ切れで木ノ葉病院に入院したナルは、眼が覚めた時には、見覚えのない花に囲まれていた。
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