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ああっ女神さまっ After 森里愛鈴
終わりからの始まり
母親
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 螢一の誕生会から二週間が過ぎた。木曜日の早朝の空は綺麗に晴れ上がって洗濯日和だ。
 ベルダンディーは、「WHIRL WIND」に出勤する前に洗濯物だけは片付けておきたかった。最後の洗濯物を物干しに下げると軽く息をついた。
 瞳には少しだけ憂いの色がある。
「相談するなら姉さんよね、でもちょっと恥ずかしい」
 ほんのりと頬を染め、独り言を呟くと、やがて決心したのか大きく深呼吸をした。
 今からでは時間的に無理ですから仕事が終わってからにしましょう。
「WHIRL WIND」はベルダンディーと螢一がバイトしているバイクショップだ。
 ところで店主の藤見千尋には、二人が結婚したことを速攻で見破られてしまった。さすが女の勘。披露宴とかはどうするのと聞かれて、螢一が苦し紛れに「なかなかいい場所がなくて」とごまかした。
 空になった洗濯かごを手に森里屋敷、母屋に近づくと、ふわっと空気が変わる。
 母屋は経年劣化で若干が隙間風あった。これはウルドが薬品を造るにおいて、そしてスクルドが精密作業をするにおいて、邪魔となった。
 そこでスクルドは特殊なシールドを発生させる装置「空間シールドくん三号」を作り出した。住人や品物などが出入りするのには問題ないが、空気の流れと温度を調整する。(空気がまったく流れ込まないなら中にいる者は窒息してしまう)これにより、森里屋敷の中は冬は暖かく夏は涼しくなった。また、屋敷全体の劣化を抑えるのにも役に立っている。
「WHIRL WIND」から戻ってきて、夜の帳がすっかり降りた頃。
 螢一はGIグランプリのブルーレイにかかりっきりで、しばらく自室から出てこないだろう。
 ウルドはスクルドの部屋で妹に法術の修行をつけているはずだ。
「スクルド研究所」とプレートの掛かった障子の前に立つ。
「姉さん入りますよ」
 姉妹でも礼儀ありだ。
 なかからウルドの声か聞こえる。
「ほらぁ、また神気が乱れてる。そんなんじゃ目標の三十分には遠いわよ──あ、いいわよ入って」
 障子を開けて「スクルド研究所」に入る。左手、西側中央隅に大きな座卓。道具入れが置かれていることから、作業台だろう。隅にアームが取り付けてあってモニターが固定されていた。作業台の南側には小さな本棚があって、少女漫画雑誌から量子学の本までいろいろな本が背表紙を見せていた。
 八畳間の中央でスクルドは空中に浮かんで座禅を組んでいた。額に汗を浮かべている。
「あの、姉さん。少し相談したいことがあるんです」
「あらあら、あんたが私に? 珍しいことがあるものね」
 ベルダンディーは頬を染めながら、しかし真剣な口調で。
「出来れば二人っきりでお話がしたいのですが」
「スクルドにはあまり聞かせたくない話、ね」
 ウルドは顎に手を当てて数秒思案していたが。

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