終わりからの始まり
覚醒
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天上界。ティールの私室。
今の彼は背が高くて金髪碧眼の美青年の姿をしていた。
備え付けられたソファに座って物憂げだ。
妻であるアンザスが、ちょっと心配そうに声をかけた。
「どうしたのですか?あなた」
「ん……ああ、いや、娘を送り出す父親がこんなにも寂しいものかと思ってな」
「そうですわね」
でも、とアンザスは続けた。
「螢一くんなら必ずあの娘を幸せにするでしょう」
「ああ、信頼しているよ」
「あと、娘はまだ二人いることを忘れないでくださいな」
ああ〜そっかぁ、と頭を抱え込むティール。
「私たちの母親、父親としての役目はまだ終わっておりません」
「そうだったな」
「それに……」
アンザスは来ている衣服を脱ぎ捨てた。
「もう一人ぐらい、欲しくありませんか?」
ティールの横に全裸で座り、しなだれかかる。
「君から誘うなんて珍しいな」
「お嫌ですか?」
「とんでもない。大歓迎さ」
地上界ではとんでもない騒ぎになっていることなど、つゆとも知らずに睦み合い始める二柱の神であった。
「終末の闇」そうね、どう表現したらいいかしら。実態のない闇、霧かな。質量反応が無いから物理的な手段でシャットアウトすることが出来ない上に、電子機器も破壊、人間程度なら包まれただけで瞬時に絶命するわ」
闇に触れたあらゆる生きとし生けるものは、瞬時に生命活動を停止する、凍ったりしないが、その遺骸はまるで液体窒素につけたかのごとく、少し触れただけで、粉々に砕け散ってしまうのだ。
リンドが先程とはまるで違った鉄面皮で問う。
「法術とか魔術で封じ込めることはできないのか?」
「法術も魔術もあくまで自然の法則に理を上書きして実行されるもの。でも、終末の闇は自然の法則から逸脱した存在。ゆえに封じ込めることはできないのよ」
このままでは地上界が滅ぶ。
「本当なのか。魔属は平気で嘘をつく、なればこその魔属だ」
続けるリンドに。
「さあ……どうかしらね。私は嘘を言っているのかもしれない。もしかしたらなにもしなくても、閉じなくなった門は消えてなくなるかもしれない。──なんてね、これは紛れもなく事実よ」
「いま、ユグドラシル(天上界中央管理システム)のメモリーを探りましたけど、終末の闇にあたいする記録はどこにも存在しませんでしたわ」
ペイオースの言葉にヒルドは唇の端をつりあげた。
「そうでしょうねぇ。天上界ではティールとアンザス、魔界では私と側近のふたりぐらいしか知らないことだもの」
「あんた、側近がいたんだ!?」
「ウルドちゃん、なに驚いているの?いっくら私でも、広大な魔界全土を一人で支配できないわよ」
魔属としてはハガルたちに劣るが、「統治する」ことについては遥かに凌ぐ。つまるところ今回の「
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