終わりからの始まり
覚醒
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息をついた。
「これは本当なら告げてはならないことなのですが、契約者の願いは予めユグドラシルが予測演算しています。契約者がどんな人柄でどのような趣味嗜好でどのように育ったのか。判断基準は多岐にわたります。ですが私たちは派遣する女神に「どんな願いであるか」を告げたりはしません。これは女神の心理的抵抗を少なくするためです。人の願いを叶える……正面から見ればとても素晴らしいことのように見えます。ですが、裏から見ればそれは人間の欲望に直接触れるものです。幸せを与える女神が与えたことで不幸になるとしたら、それって矛盾しているでしょう?故にごく一部の神属は女神の仕事を軽蔑されています。ですが私たち女神は人間の願いを叶え続けます。なぜだかお解りですね、ベルダンディーさん」
「願いを叶えた方の笑顔が素敵だから、でしょうか」
メイプルは頷いた。
「人の願いを叶えることで女神も幸せになること。人と女神が一緒に幸せになること。これが「女神の救済システム」の本質です」
「私、はじめて伺いましたわ。ですがなぜ今その話をしたんですの?」
ペイオースは驚いていた。
「ですから、はじめに告げてはならないことと言ったはずです──それにしても、螢一さんの「お願い」はユグドラシルの予測演算から完全に外れていました」
「え!?……そう、なんですか?」
「はい、あの時は慌てましたわ」
ウルドが口を挟んだ。
「つまり、螢一のお願いは「内角低めのぎりぎりストレート」だった、ってこと?」
「そこ、茶化さないように。ですからやむを得ず螢一さんの欲望を制御したのです。後で調べたのですが、予測が外れたのは前例がありませんでした」
ふう、とため息を一つ。螢一に向けたものだったのか、それともこれから話す内容にか。
「さて、ここからがペイオースさんの質問の答え、私が地上界に降りてきた理由、本題です」
黒曜石の瞳がベルダンディーを真っ直ぐ見つめた。
「あなたは女神の仕事を今後どうなさるおつもりですか?」
「え?……あ!!」
螢一はここではじめてベルダンディーが「仕事」として地上界に降りてきているのに気がついた。
ベルダンディーもメイプルを真っ直ぐに見つめている。
「私は螢一さんを幸せにするために地上界に降りてきました。あなたは言いましたね。人と女神が一緒に幸せになることが「女神の救済システム」の本質だと。ですから、これも私の仕事です」
「それは詭弁です。あなたは地上界にいることを「仕事」とは思ってはないでしょう。仕事でないなら私は今すぐにでもあなたの地上界勤務を解いて天上界に連れ戻します」
「……!!」
「仕事と思ってないことを続けさせるほど、うちの事務所は甘くはありませんよ」
鋭い言葉にベルダンディーは混乱した。いや、進退窮まった。
私は仕事としてこ
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