終わりからの始まり
エピローグからのプロローグ
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季節は十一月、初旬。空が蒼く高く肌を擦る風はすっかり冷たくなっている。
千葉県猫実市。人口二万の古い街並みと新しい街並みがごっちゃになったような、首都圏への通勤客も多いこの街。二人にとっては思い出の宝石箱。そしてこれからも暮らしていくであろうその上空で、人と女神の厳粛で荘厳な結婚式が執り行われていた。
きっかけは魔界のナンバー2、ハガルの謀反から始まった。大魔界長ヒルドを封印して、自らが大魔界長として地上階の「魔族のシェア」を一気に取り戻そうとしたのだ。しかしながらこれは間違いであった。
太古の昔から「神属」と「魔属」は「地上界のシェア」を狙って争い、互いに何度も何度も滅びかけてきた。
双方の滅びを防ぐために「神属」と「魔属」の間で契約が結ばれた。
「タブレット制」
神属と魔属の間で、双方の子供に命の共有の契約をさせ、その契約の記憶を消す制度。結果、(神属・魔属いずれかの)片方の契約者が死ぬともう一方の契約者も死ぬことになり、さらにその契約者が誰なのか分からなくなる。そのため、うかつに相手方の命を奪うと身内の誰かが同時に命を落とすことにつながる恐れがあり、神属・魔属の双方で殺し合いとならずに済む。
さらに「地上界のシェア」を今後均等に分割することで話し合いは済んだ。
しかしながら、ベルダンディー達が地上界に常駐することでこのバランスが崩れていた。
それでもうまくやっているつもりだった、とはヒルドの言葉である。
ハガル達にはそれが気に入らなかったらしい。
さらにもう一つ、大魔界長は任期終了が迫っていた。魔界法第2061条21項、「大魔界長は任期終了とともにその生命も終了する」
大魔界長ヒルドが死ぬ──
ハガル達にはヒルドに恩がある。だからこそ急いでいたのだ。前述したように間違いであったのだけれど。
地上界に残っていた千分の一のヒルドの分体は、三女神、ウルド、ベルダンディー、スクルドに「救援要請」を発した。三女神はこれを受諾、ベルダンディーのセイフティとして螢一も同行した。後になって思えばこの螢一の行為がすべてを決定づけたといってもいいだろう。ちなみにこの日は螢一の誕生日だった。ベルダンディーからのプレゼントは時計、24時間の文字盤をもつ、コスモノート「旅人の時計」だ。
ヒルドはさらに千分の一の分体を螢一に預けた。「これが切り札となる」と。ハガルに接近しそれを使うことで彼女の身体をコントロールする。ヒルドの授けた「作戦」にのって女神と人間は行動を開始した。見送り時にヒルドが螢一にキスしたことでちょっとしたトラブルはあったが。
螢一はヒルドから貸し与えられたグリューエンデスヘルツに乗って、女神達は自力で旅立った。
魔界への門を開けておく最大開放時間は六時間。
「まぁ……保険、ってとこかな
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