南洋の死神
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3、今度こそ貴様は我等に敗れることになる。この南洋の街においてな」
ドクトル=ゲーはタクシーに乗り空港を後にする風見を上から見下ろしながら言った。その後ろには音も無く数体の影が現われていた。
シンガポールはその人口の大部分が華僑で占められ所々に中国文化の影響が見られる。だが世界でも有数の貿易都市でもあるこの都市国家は多くの国から多くの人々が来訪し生活する国際国家なのである。
APECの本部も置かれ環太平洋地区の覆うの人達がいる。日本人やアメリカ人、中国人といった世界中を股にかける人達やASEAN各国は無論の事アラブやヨーロッパからも人が来る。それと共に彼等が持つ文化ももたらされる。
その結晶の一つとも言えるのがシンガポールの象徴マーライオンである。『海の獅子』という意味のこの架空の生物は陸と海、中華と欧州、イスラム、そして南洋のそれぞれの文化が互いに混ざり合い影響し合う事により誕生したのである。
タクシーから降りマーライオンを一瞥した後風見は予約していたホテルに入った。
ホテルに入りフロントに挨拶し日本語新聞を買うとそのまま自分の部屋に入った。白を基調としたヨーロッパ風の落ち着いた雰囲気の部屋だ。中に入るとソファーにすわり新聞に目を通す。
経済面での日本や東南アジアの動向の他にイスラエルとパレスチナの情勢が政治面に大きく取り扱われていた。他には中国の長江流域の開発やNASAの新型ロケット開発等が取り上げられている。
中には変わった記事もある。ドイツの古城が謎の爆発により崩壊した事件やインドでの人に似た未確認動物の噂話を扱った記事等だ。
「・・・・・・・・・」
風見は表情を変えず落ち着いた様子で新聞を読んでいる。それを一通り読み終えたたんでテーブルの上へ置いた。白のカップに紅茶を注ぎ込み一口飲む。ミルクだけで砂糖は入れない。その方が茶とミルクの味を味わえるからだ。一杯飲み終えた時チャイムが鳴った。
「誰だ?」
ルームサービスは頼んでいない。ホテルのスタッフ以外に部屋は知らせていない。だとすれば何者か。ドアに手を掛け鍵を解こうとする。
鍵が解かれる直前に何者かが部屋に押し入って来た。黒のスーツに赤のプロテクターとマスクを着けている。三人いた。
「ギィッ」
彼等は部屋に入るとそのまま部屋を見回した。明らかに何か、若しくは誰かを探している。
焦った仕草で部屋中を見渡す。しかし探しているものは何処にも無い。その時上から声がした。
「俺ならここだ」
「ギッ!?」
蹴りが上の壁から来た。一人がそれを喉と顎に直接受け後ろの壁に叩き付けられる。
残った二人がギョッとして上を見上げる。そこに風見志郎はいた。刺客達が部屋に乱入する直前に跳び上がり壁に張り付いていたのだ。
スタッと二人の
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