南洋の死神
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た軍服は肩等に豪奢な金モールを着けている。下は黒のズボンである。右手には大鎌がある。名をドクロ少佐という。
ドクロ少佐、その名を聞いて震え上がらぬ者はいない。かって日本には忍者という暗殺、諜報を生業とする者達がいた。影に生き影に死ぬ。闇の中に潜み狙った者は必ず葬る。彼等の使う驚異的な体術、そして手裏剣やまきびしといった独特の不思議な形状の武器、これ等を総称し人々は『忍術』と呼んだ。
彼等は戦国時代には日本を所狭しと暴れ回った。その力を恐れた織田信長は彼等の主な勢力の一つである伊賀を攻め伊賀の国において凄惨な殺戮戦を展開したのである。
安土桃山時代に入ると他の者に混ざり日本を出る者も現われた。その中の一人が当時陰謀渦巻くイタリア半島へと渡ったのである。
彼は傭兵として、刺客としてローマ=カトリック教会やメディチ家等多くの勢力に雇われた。そして多くの仕事をやり遂げてきた。生まれてから死ぬまで彼は闇に生き生を刈り取る仕事をしてきた。彼の心は人から人ならざる者、異形の者のそれと化してしまうのも当然の成り行きであったのだろう。
現身は滅んだ。しかし魂は残った。彼は死神として甦り再び生を刈り取りはじめた。かっての生業としてではなかった。楽しみとして生を刈り取っていたのだ。その手に持つ大鎌で多くの者の魂を断った。イタリアの黒い夜を鮮血の帳で覆いローマやヴェネツィアといった美しい街を土色をした屍で覆い尽くした。彼こそはイタリアを影と闇の世界から支配し恐怖と絶望の色で塗り替えた悪夢の神であった。
その子孫がドクロ少佐である。祖先忍術に咥え自らが鍛え上げたイタリア忍者集団DDDを率いその悪名を轟かせたデルザー軍団一の刺客とされ彼に命を狙われ生を全うした者は一人を除いていない。
「あれが仮面ライダーX3、風見志郎か」
ドクロ少佐は出口に向かう風見を見下ろしつつ言った。
「そうだ、あの男がいる限り我等の作戦は円滑に進められぬ」
ドクロ少佐の周囲が一瞬闇に包まれた闇の中にレーザーが発せられるとその中から一人の男が現われた。
蠍を模した金の兜に銀の鎧とズボンを着けその上から赤い戦抱と青のマントを羽織っている。黒い顎鬚を生やし手に斧と盾を持つこの男の名はドクトル=ゲーという。
かってはライン川流域に昔からあった名門貴族の家の当主であった。医学者でもあり細菌研究において才を発し名を知られるようになる。このままいけば彼は細菌研究の権威としてコッホに並ぶ名声を得たかも知れない。だが時代が彼の人生を狂わせた。
第一次世界大戦の敗北と大恐慌によりかって繁栄と強勢を誇ったドイツは一転して貧困と絶望の底へと落とされた。街には孤児や浮浪者が溢れ混迷と退廃が支配した。彼自身も自分と祖国の未来に絶望し酒浸りの日々を送っていた。ある時仕事先のミュンヘンで一人
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