聖地の鉄人
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悠久の大陸と呼ばれ長い歴史と独特の文明を誇るインドはその中に多様な民族と文明を内包している。他の国の人々には理解し得ないものも多くそれが多くの人々を惹き付けてやまぬインドの魅力ともなっているのである。とりわけ宗教に関してはインド程多様かつ複雑な国もないであろう。
仏教がインド発祥であるのは有名であるがその他にも厳格な戒律で知られるジャイナ教やシーク教、ムスリムのジハードによりもたらされたイスラム教、ヨーロッパ人達も布教したキリスト教等大小で無数にある。
その中でも特に大きな勢力を持つのがヒンズー教である。インド古来の神々に仏教等他の宗教の要素やドラヴィダ人、アーリア人の哲学、文化を取り入れたこの宗教は将にインドそのものを表わしているといっても過言ではないであろう。
カースト制や穢れの思想、創造、調和、破壊のサークル、輪廻転生、多くの今も生きる神々、それはインドの人達の心にたゆまなく流れる大河のようなものである。
そのヒンズー教において聖地とされるのが古都ベナレスである。本来の名をヴァーラーナシィーというこの街はかってクーシー=光の都と呼ばれた。聖なる河ガンジス河の中流に位置し多くの信者達がこの聖なる河へ沐浴しに来る。
この街はまたの名を『火葬場の街』ともいう。聖なる河に流されこの世での終わりを願う人達が集まる為この名がついたのであり、この街で死を待つ人達も集まっている。
街は大小様々な路が入り組んでおり巨大な迷路の様になっている。石炭が採れる為車がひっきりなしに大路を走っている。その脇で商人達が店を開いている。富める者も貧しい者も行き交い路で寝起きする者もいる。犬や羊豚も路にいるがとりわけ多いのはヒンズーにおいて神の使いとされる牛である。牛は人と共に生き人と共に死ぬ。それもインドなのである。
そのベナレス近郊のある古ぼけた寺院の地下に彼等はいた。
「そうか、やはりこの地に来たか」
暗い一室でテーブルを前にして車椅子に座した老人が呟いた。
白のタキシードとズボンの上に裏が赤地の黒マントを着た白髪の一種独特のダンディズムが漂う老人である。彼の名は死神博士、かってショッカーみっての天才科学者として悪名を天下に轟かせた人物である。
スペインアンダルシアのセビリアに生まれた。幼い頃より神童と謳われ医学、化学及び工学で天才の名を欲しいままにする。だがその反面占星術やオカルトにも造詣が深くやがて錬金術にある『賢者の石』を欲するようになる。様々な試行錯誤の末その謎を解明するに至るがそこでショッカーにその才を買われ招かれる。
それまではいささか風変わりな人物として知られていながらも悪評や中傷とは全く無縁であった彼が何故ショッカーに入ったのかは誰にも解からなかった。一説には錬金術を学ぶ過程で様々な生体実験を執り行ない、それに
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